──創世記より抜粋──

神は楽園に人を置き、あらゆるものを食べて良いと命じたが善悪を知る知識の木の実のみは「取って食べると死ぬであろう」として食べることを禁じた。
しかし蛇にそそのかされた女が善悪の知識の木の実を食べ、女に勧められたアダムも其れを食べた。
神は蛇を呪い、女の子孫がおまえのかしらを砕くと預言した。
女に対しては産みの苦しみと夫からの支配を、アダムに対しては地から苦しんで食物を取る事と土に還る事を預言した。
アダムと後にイヴと名付けられた女は神によって楽園から追放された。





「人類の起源を辿るとひとりの女性にあたるって話、知っている?」
「あぁ、えっと…確かミトコンドリア・イヴだっけ?詳しく知らないけど」
「一時期話題になったね。南アフリカに住んでいた人がそうだとかなんとか」
「みんな詳しいねぇ」
「ミトコンドリアってやつは母親側からしか遺伝しないんだと。んでこの性質を利用して人類のルーツをたどると最終的にひとりの女性にたどり着くって訳」
「うわ…全然解らん」
「んじゃあ男の起源は?其れも判明している訳?」
「男は無理。男はDNAが引き継がれないから特定は出来ないんだ」
「へぇ…なんだか女性って優秀ね」
「まぁ、人は女性から生まれるからね。女性は偉大だよ」
「其れを云うなら男だって偉大だろう?男がいなきゃ子ども、出来ないんだぜ」
「其れはそうだけれど極論だな」
「んだよ、男見下すなよ」

(…というかなんでこの話に?)

一応話の輪に加わってみるけれど解らない事ばかりでふんふんと訊く振りをするので精いっぱいだった。


定期的に開かれる【H6B会】

平成6年生まれの会(H6Birth会)の略。

つまり平成6年生まれの人同士が集まって交流を持つ会だ。

ネットで見つけたこのコミュニティーにほんの気まぐれで参加したのは一年前。

三ヶ月に一度のペースで行われるオフ会という名の飲み会。

二度の参加で顔見知りも増え三度目の今日、色んな人と色んな話を愉しめるようになった。

この会に参加して様々な人と知り合う機会があった。

私が初参加した時からいる人、毎回必ず参加する人、不思議な習性を持つ人、ある日突然退会してもう逢えなくなる人、そして


「あの…愉しくないですか?」
「──え」
「先刻から何も話していないようだから」
「…」


今日、初めて逢ったこの人──とか。

(名前…やまかどさん)

胸に付けられているネームプレートで名前を確認した。

「山門さんは何処の出身ですか?」
「…京都」
「京都!わぁ、素敵!私、京都大好き」
「ふっ」
「え」
「女って大抵そう云うな」
「…」

今まで無表情だった彼が急に小馬鹿にしたような厭な笑い方をした。

「京都の何をもって素敵で大好きとか云ってんだか」
「そ…其れは…私、歴史好きだし、旅行で何度も行っているし」
「あぁ、観光地が好きって事」
「…」

(なんだろう…なんか…ムカつくなぁ)

なまじ見た目がいいから最初目にした時から気になっていた。

皆がわいわい騒ぐ一方で隅でひとり静かにお酒を飲んでいる姿もカッコいいなとか思っていただけにこの少々棘のある会話に好感度バーはみるみる低下して行った。

「なんや、急に黙ってしもぅて」
「!」

不意に漏れた京都弁にドキッとした。

(な、なんか…方言だと同じ厭味っぽい言葉でもドキドキするのはなんで?!)

訳も解らずにカァと赤くなった気がした。

(今!バーが急上昇した!──気が…)


「ちょっとちょっと、園ちゃん!なーに隅っこにいるの」
「あっ」
「ほら、紅一点の深浦さんがいないと盛り上がらないでしょう」
「ちょ、ちょっと」

ほんのり酔った雰囲気の松岡さんと伊達さんに引っ張られる様に元いた輪の中に連れ戻される。

(あぁ、もっと山門さんと話していたいのにっ)

そんな私の心の声は当然誰の耳にも届きはしなかった。


生憎今日のオフ会参加者7人の内女性は私ひとりだった。

私が初めて参加したオフ会の時にいた松岡さんと伊達さん。

会を起ち上げた主催者の天地さん。

毎回参加するけれどたった一時間で帰ってしまう朽名さん。

今日で退会する入佐さん。

そして

(山門さんっ)

連れて行かれる私を気に留めない様に再びお猪口で日本酒を飲んでいる山門さん。

(引き留めてくれたっていいのに!)

其の無関心ぶりが何だか私の下心を悟られたみたいで少し恥ずかしく思ってしまった。



私、深浦 園子(フカウラ ソノコ)

【H6B会】への参加目的が彼氏探しだなんて口が裂けても云えない女です。

rng150
◆ランキングサイトに参加しています。
1ポチ頂けると執筆の励みになります。

恋愛ランキング
にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村