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*AriaLien Sub BLOG*

暴君と秘密の彼女

暴君と秘密の彼女 6話



──だけど

天眞に限って浮気は考えられないと自分自身に何度も云い訊かせた。

(そうよ!天眞は私にゾッコンなんだから…浮気なんて事…考えられない!)

必死になって雑念を払うも、天眞と其の顔が見えない女性はやけに親密そうだった。

(なんか…やけに込み入った話しているっぽい)

席境の観葉植物に身を隠しながらふたりの様子を見ている私は傍から見たら明らかに不審者だろう。

(あぁ…もう、いっその事ふたりの前に出て行こうかしら)

そんな気持ちになった矢先、いきなり天眞と女性はソファから立ち上がった。

(!)

慌てて低頭姿勢を取る。

幸いにもふたりは私が身を隠している席とは反対側から回ってロビーを抜けて行った。

(今度は何処に)

私は見つからない様にふたりの後を付けて行くけれど

(えっ)

ロビーを抜けたふたりの姿は曲がり角の突き当りのエレベーター前で消えていた。

(…行き止まりって事は…ふたりしてエレベーターに乗ったって事?)

其れはどういう事かというと…

(つまり…つまり天眞とあの女は……部屋に行ったって事で…)


其れはつまり──


茫然としている私の目には上の階へ上がって行くエレベーターの階数表示の点滅の赤色しか映っていなかった。


天眞に限って浮気なんて考えられない。

だって私にゾッコンで結婚するって云ってくれたし…

会社の人にだってまだ結婚前の私を奥さんだって云っている位だ。

(そうよ…天眞は私を裏切らない)

何度も何度もそう心の中に云い訊かせる。

だけど

(じゃあこの行動の真意は何だって云うのよ!)


私の知らない処で繰り広げられた疑惑の数々。

其れはいくら私が天眞を信じていても払拭出来ないくらいの怪しさでいっぱいだったのだ。

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暴君と秘密の彼女 7話




──ハッキリいってどうやって帰って来たのか記憶にない

というかよく無事に家まで帰って来られたなというのが正直な感想。


「はむっ…ん…っ、んっ」

私は持ち帰ったお弁当を黙々と食べていた。

「ん、んっ」

相変わらず粗食な弁当であっという間に食べ終わってしまった。

ゴクゴクとお茶を流し込んでドンッと湯呑を卓袱台に置いた。

「て~ん~まぁぁぁぁ~~~!」

私の中は訳の解らない怒りでいっぱいだった。

天眞を信じたいという気持ちと、でももしかしたら私は天眞に騙されているんじゃないかという疑惑。

其の両方がギリギリとせめぎ合っていて、どうしようにもないどす黒い気持ちとなって私の心を波立たせた。

(なまじ大金を手にした男は色に走るっていうし!)

いつか何処かで見聞きした中途半端な知恵を持ち出し益々落ち込む。

だって天眞の会社が大きく成長している事実を知らなかったから、この質素倹約の生活も納得出来ている処があった。

早乙女が負った借金を天眞が一生懸命働いて無くしてくれたと思えばこそ申し訳なさと感謝の気持ちでいっぱいだった。

だから最初こそ厭で厭で仕方がなかったこの質素な生活だって今では身の丈にあったものだと受け入れている。


其れなのに──


(天眞、お金持ちになっているじゃない!)

其れを隠されていたという事にも腹が立つし、其れになんてったって

(昼間の女は誰なのよ!)

結局は其れがこの腹立たしい気持ちの一番の元凶なのだ。


「ふっ…ふふっ…」

生憎と私はただ黙って浮気されてメソメソ泣いている様なしおらしい女じゃないのよ。

(帰って来たらみっちり問い質してやるんだから!)


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暴君と秘密の彼女 8話



「ただいま」
「あっ、お帰りなさい、天眞」

帰宅した天眞を私はいつもの様に笑顔で出迎えた。

天眞はネクタイを緩めながらチラッと私の顔を見た。

「なぁに?」
「…いや、何かいい事でもあったのか?」
「どうして?」
「凛子、なんか顔がニヤけている」
「…」

(いけない…つい天眞をとっちめる事を考えていたら…)

此処に来てから天眞には随分と苛められて来た。

尤も其の苛めも根幹は愛のあるものだったから赦せたのだけれど…

(でもいつまでもやられっぱなしの私じゃないのよ!)

久し振りに私が優位に立てそうな事態が来るのかと思うとどうしても気持ちが高揚してしまうのだった。


「天眞、先にご飯にする?其れともお風呂──」
「其の前に話がある」
「え」

勿体振って焦らそうと思っていた矢先、天眞が真面目な顔をして云った。

「話って?」
「此処に座れ」
「…」

トントンと天眞の隣の畳を叩かれ、私は其処に座った。

「えーっと…だな」
「うん」
「……其の」
「…」
「…」
「…何なの?」

何故か天眞が云い難そうに口ごもった。

こんな天眞は珍しかった。

「だから、其の…結婚式の件なんだが」
「うん」
「…すまないが、もうあと半年ほど…先に延ばさせてくれないか」
「は──?」

(何を云うのかと思えば)

「あと半年…いや、もしかしたらもう少し先に…なるかも」
「…」
「というか、具体的な式の話はしばらく止めないか?」
「……」

(なんで…なんで急にそんな事を)

天眞だって私のウェディングドレス姿を見たいと云っていたのに…

どうして急に式を先延ばしにしたがっているのだと考えると──

(──あぁ、そう。そういう事)

「…凛子?訊いているか」
「~~~天眞ぁぁぁぁぁぁ!!」
「!」

私は今まで抑えていた感情を此処に来て一気に爆発させてしまった。

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暴君と秘密の彼女 9話



「天眞!あんた、私に隠れてコソコソと浮気してんじゃないわよ!」
「はっ?…浮気?」
「とぼけるんじゃないわよ!私、ちゃーんと知っているんだからね!今日、昼間ホテルで密会していた髪の長い女の事よ!」
「!  なんで凛子が其れを──」

途端に天眞の顔色が青くなった。

気のせいか頬を滑る汗の量も増えている様な気がした。

「やっぱり…やっぱりやっぱり~~浮気していたのねぇぇぇーこんの浮気男ぉぉぉ──!」
「わっ」

私は怒りに任せて天眞に飛びかかり何度も其の頬を叩いた。

「赦さない!赦さない、絶対に赦さない!!」

天眞の体を押し倒し馬乗りになってパンパンと何度も叩く。

其の間天眞は目を瞑ってジッとされるがままになっていた。

「私の事を好きって云っていたのに…!愛してるって云ったくせに…!そんな事を云ったこの口で違う女にも同じ様な事を云っていたの?!」
「…」
「天眞っ!何とか云いなさいよ!!」

天眞の頬は赤くなり、叩いている私の掌もジンジンと痛かった。

「云い訳のひとつも出来ないって云うの?!天──」
「…お嬢様」
「!」

呟く様に放たれた其の言葉はとても久しぶりに訊いた呼称だった。

「な…っ…なっ」
「…もう、お止め下さい…お嬢様の白魚の様な手が紅葉の様に真っ赤に染まっています」
「~~~な、何云って……!」

痛む掌が差し出された天眞の両手で握られた。

「お嬢様、この天眞が優しく労わって差し上げましょう」
「~~~」

(なんで…なんでこんな時に…執事モードにっ)

久し振りに訊いた天眞の優しい口調に不覚にも胸がドキンドキンと高鳴って居た堪れなくなった。

ゆっくりと上体を起こした天眞の頬は私に叩かれたせいで真っ赤になっていた。

「お嬢様、痛いでしょう?」
「……」

天眞に擦られている赤い掌が酷く熱かった。

「俺なんかの頬を叩いてお嬢様の清らかな手を痛めてはなりません」
「…天眞」
「はい」
「…頬、痛いでしょう」
「いいえ、お嬢様が受けた痛みに比べればこんな痛みは何でもありません」
「…」

何故か私はこうなった経緯の事をコロッと忘れて、昔に戻った天眞の優しい執事モードに酔いしれてしまっていた。

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暴君と秘密の彼女 10話



思わず戦意喪失してしまい、ボーッとしていると急に視界が反転した。

「!」

トンッと押し倒された私に透かさず馬乗りになった天眞はよく知る悪い顔をしながら云った。

「おい、どういう事だ」
「えっ!」
「いきなり俺を浮気者呼ばわりした挙句、押し倒してビンタの往復とは…随分と調教が行き届いている様だな」
「な…な、何を云って…」
「おまえが何を云っているんだって話だ」
「!」

いきなり優しい執事から俺様暴君へと豹変した天眞の唇が私のものと重なり、凄い勢いで貪られた。

「ふっ…んっ!」

息苦しさからもがけばもがくほどに天眞の舌は私の口内を攻め続けた。

「ん…ふっ、や…やめ…っ」

(なんでいきなりキスされているの?!)

どうしてこの流れになったのかがよく解らない。

決してこんな甘い雰囲気になる様な流れではなかったはずなのに──

頭の中でグルグルと考えていると、やがて天眞から受ける行為に頭も体も痺れてしまって何も考えられなくなってしまった。

「はぁはぁはぁ…」
「やっと落ち着いたか」
「はぁ…ぁ…っ、お、落ち着かせるために…キスしたって事?!」
「そうだ──さぁ、全部話せ」
「えっ」
「おまえがこんな暴挙に出た理由を全て俺に話すんだ」
「~~~」

(どうして形勢が逆転しているのよ!)

ほんの少し前までは私が優勢だった。

なのに何故不義を犯した天眞が威張っているのだろうと憤りを感じた。

「おい、凛子、訊いて──」
「何よ、そんな偉そうに!なんで私が怒られなきゃいけないのよ!」
「…何」
「そもそも天眞が浮気しているからいけないんでしょう?!其れを怒って私が暴れたって其れは正当防──」
「どの口が正義面吹かしているんだぁ、えっ?!」
「い!いひゃ…いひゃい」

いきなり天眞に両頬を引っ張られ痛みが走った。

「凛子、おまえはまだ何も解っていないな」
「にゃ…にゃにが」
「おまえが俺に手を上げてもいい時は俺がおまえを裏切った時だけだと云っているだろう」
「りゃ…りゃからしょれがいみゃじゃ…」
「俺はおまえを裏切っていない」
「らって…らって」
「──まぁ、いい。理由を訊くのは仕置きが済んでからだ」
「えっ!し、仕置き?!」

やっと頬を放された──と思った瞬間、天眞は緩めていたネクタイを解き、其れを器用に私の両手首に巻き付けた。

「ちょ…天眞っ」
「黙れ、どういった経緯があろうと俺を一時でも浮気者と疑ったおまえは調教し直しだ!」
「なっ」

天眞が本気で怒っている目をした。

天眞にこんな顔をさせてしまった私は何かとんでもない過ちを犯してしまったんじゃないかと、私の方こそが後ろめたい気持ちになってしまったのだった。

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