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*AriaLien Sub BLOG*

結んで拓いて

結んで拓いて 6話



やがて尊臣さんは何事もなかったかのようににっこり微笑んで私の元に戻って来た。

「結界をね、張り直しました」
「けっかい?って」

訊いた事がある言葉だけれど実際どういうものなのかは解らない。

「さぁ、紅茶が冷めないうちにどうぞ」
「あ…はい、いただきます」

結局尊臣さんは詳しい事を私に説明せず、何事もなかった様に持って来た紅茶セットで紅茶を淹れ、私に差し出した。

そして気が付く。

(あれ?なんか…部屋の中、暖かい?)

先刻感じた寒々とした印象はいつの間にか無くなっていて、其の代わりにポカポカと春の陽だまりの様な心地いい温度が感じられる様になっていた。

「どうしたの、十和子ちゃん」
「あの、暖房、入れてくれたんですか?」
「え」
「なんだか急に部屋の中が…」
「あぁ、暖かくなったかい?其れはよかった。全ては十和子ちゃんのお蔭で強固な結界を張り直す事が出来たからだよ」
「…えっと?」

首を傾げる私を余所に尊臣さんは笑みを浮かべながら自分で淹れた紅茶に口をつけていた。

(なんだろう…何か…変)

変なのはこのお屋敷に来た時から沸々と感じていた事だけれど其れを尊臣さんに云ってもいいのか迷った。

「十和子ちゃん、僕に色々訊きたい事があるでしょう?」
「え」
「勿論あるよね。解らない事だらけが起こっている訳だし」
「…あります、沢山」
「うん──でも十和子ちゃんの質問は僕の話が終わってから訊いてもいいかな?」
「…はい」
「ありがとう。じゃあまず…この五條の家の事なんだけれど、十和子ちゃんはお母さんから何か訊いているかい?」
「えっと…確か凄く由緒ある古い家で、お祓いみたいな事をやっている…って事くらい」
「そうか…じゃあ話は簡単かな」
「簡単、なんですか?」
「この家の始祖──つまり最初のご先祖さまは平安時代に陰陽師として活躍していた五條貞臣という人らしいんだけどね、実はあまりにも昔の事過ぎて詳しい事は解っていないんだ」
「お、陰陽師…」
「知っている?」
「確か映画とか…漫画とかで見た事が…悪霊とかを祓う人…?」
「其の程度の知識でいいよ。陰陽師って実は色んな物事を取り仕切る職業の総称みたいなものだから。実際貞臣がどの程度の仕事をしていたかなんて僕たちに解る訳がないよね」
「そうなんですか?」
「そうだよ。で、そんなちょっと変わった家業が長きに渡って受け継がれて来たのが現在のこの家って事」
「凄い…日本史の世界の話ですね」
「ははっ、そうだね。でもね、ただ古臭いだけの家だよ、此処は。だからね変に気負わなくていいよ。歴史だけはあるけれど今じゃごく普通の家と何ら変わりない」
「そうなんだ…」

多分『そうなんだ』なんて簡単に片づけてはいけない位にもっと深くて濃い歴史やしきたりがあるんだろうけれど、尊臣さんは私みたいなもの知らずの小娘にも解り易く説明してくれているんだと思った。

「家は代々世襲制で当主を継承して来ていて、次期当主は僕という事が決まっている。つまり十和子ちゃんは其の次期当主の妻という立場で五條家に嫁入りする事になります」
「! あの…其処!」
「え?何処?」
「あ、いえ…あの、其処が解らないんです。なんで私なんですか?だってそんなに凄い歴史のあるお家の、跡取りになる人のよ、嫁って…普通はこの家に相応しい其れ相応の家のお嬢様とかが相手になるんじゃ…」
「…」
「うちなんてごく普通の母子家庭だし…私だって其処ら辺にいる様なごく普通の女子高生でなんの取り柄もない──です」
「ふふっ…つまり其れが十和子ちゃんが質問したい事の最優先事項って事かな?」
「!」
「其の質問に答えたら十和子ちゃんは僕と結婚してくれるの?」
「なっ…!」

麗しくも妖しい微笑みで見つめられてドキッとしたと同時に背筋がゾクッとした。

何故か肉食動物に狙いを定められた草食動物の様な…

そんな感じの気持ちに一瞬なった。

(な…なんだろう…この何ともいえな雰囲気は)

ドキドキ胸が高鳴っているにもかかわらず、見つめられた尊臣さんからの視線を逸らす事が出来なかった。

「うちはね、基本恋愛結婚だよ。其れは当主となるべく長男に至ってもそう」
「…恋愛結婚」
「父さんも母さんとは恋愛結婚だよ。幼馴染みだったんだけどね。そんな訳で本来僕も自由に恋愛結婚する事が出来たはずだったんだ」
「じゃあ…なんで私なんかを…私とは18歳も歳の差があって接点だってそんなになかったのに」
「…見つけたんだよ、父さんがあの日──16年前のあの日に」
「えっ…其れって…お母さんが私を連れて橋から──っていう?」
「そう。あの日父さんはとても大きな力に導かれたと云った。誘われる様に進んで行くと其処で十和子ちゃんを連れたお母さんと出逢った」
「…」
「其の時父さんは驚いたそうだよ。十和子ちゃんがあり得ない程の生命力に満ちた光を放っている事に」
「はっ?!生命力…?」
「簡単にいうとそんな感じなんだけれど少し難しく云うと、十和子ちゃんの生まれながらに持っている力は僕みたいな消耗型の祓い師にとってはご馳走──つまりは失った霊力をこの体に補給出来る力を十和子ちゃんは持っていたという事なんだよ」
「?? えーっと…」
「んー解り易く云うと、僕が携帯電話で、使えば使うほど電池は減るでしょう?其れを充電するためには充電器がいる。其の充電器が十和子ちゃんって感じなんだけど…これで解る?」
「充電器?!私が?」

(なんか…物凄い例えなんだけど解り易いって云うか…)

「十和子ちゃんの持つ力はとても強力で、一介の術者には扱いきれない程の熱量を秘めている」
「…もしかして…あの、先刻逢った弟さんたちがいなくなったのって…」
「うん、十和子ちゃんの放つ力に恐れてって事かな」
「そ…そんなの…今までそんな風に怖がられた事なんて私…」
「普通の人間には無用の力だから感知しないだけだよ。力の周波数が違うんだ。まぁ少しでも霊的な力を持った人間には解ってしまうかも知れないけれど」
「だったらなんで、尊臣さんは平気なんですか?」
「んー其れはきっと僕が思っている以上に強大な力を操れる人間だからじゃないかな」
「え」
「其の分寄って来られる悪霊も大きくて常に力を放出し続けなければならないけれど、でもそんな僕に十和子ちゃんが付いてくれたら鬼に金棒でしょう?あ、携帯に充電器って云った方が解り易いかな?」
「…」
「今まで長く悪霊の類と対峙して来た僕は、元々持っていた能力がいつ枯渇してもおかしくない状態にあった。これ以上他から霊力を補給しないままでいたら──」
「…いたら?」
「いつか僕は壊れてしまうだろうね」
「?!」

(壊れるって…其れって…死──?)

「だから父はそんな僕の状況を見据えて幼い十和子ちゃんを僕の婚約者にと求めた。僕も初めこそは戸惑ったけれど、次第に僕自身が十和子ちゃんの力を欲している事に気が付いたんだ」
「!」
「十和子ちゃんが成長する毎に僕のお嫁さんになってくれたらいいなという気持ちが大きくなったんだよ」
「…」


(なんだろう…何か…厭)


先刻からじわじわ湧き上がって来た気持ちに気分が悪くなりそうだ。

「だって僕はずっと──」
「止めてください!」
「え」

気が付けば私は大きな声を出して尊臣さんの言葉を遮った。

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結んで拓いて 7話



「もう…いいです!」
「十和子ちゃん?」

私はスッと尊臣さんとの距離を開けて云った。

「所詮私は尊臣さんに力を与える存在だけで選ばれたって事、なんですね」
「え」
「私が…尊臣さんの力の補給が出来るから…ただ其れだけで望まれて…」
「…十和子ちゃん」
「力があったから、だから私で…でも其れって…力があれば私じゃなくたって…ってそういう事なんですね!」

何故かぶわっと涙が溢れてしまった。

「! 十和子ちゃん」
「やっ…!」

いきなり尊臣さんが私の腕を取り、すぐ傍まで体を寄せた。

「ちが、違」
「放して!もう…もう帰る!」
「帰さない!」
「?!」

間近に尊臣さんの顔が──と思った次の瞬間、唇に柔らかなものが押し当てられた。

「…」
「んっ…んん」

押し当てられたものが尊臣さんの唇で、やっとキスされているのだと解った。

「十和子ちゃん」
「!」

押し当てられるだけのキスはほんの数秒で終わった。

「ひ…酷いっ!いきなり…っ、は、初めてだったのに~~」
「いきなりでごめん──だけど話、ちゃんと最後まで訊いて欲しくて」
「ふっ…ぅえ…」

訳の解らない涙がボロボロ滴って嗚咽が止まらない。

「確かに──最初に惹かれたのは君の力だった。この力を僕が自由にする事が出来たらいいなと思った」
「ふぇ…ぇっ…え…」
「だけどそんな事だけで僕は君を嫁にしようとは思わなかった。現に最初父さんから十和子ちゃんを婚約者にという話があった時には一度断ったんだ」
「……え」

尊臣さんの言葉に荒ぶっていた気持ちが少し落ち着いた。

「いくらなんでも生まれたての子にそんな気持ちにはならなかったよ。其の時僕は18だったし…其の…一応其れ相応の恋愛もしていたし…」
「…」
「だから其の話はずっと保留にしていたんだ。ただ…君には興味があったから…悪いなとは思ったけれど君に式神を放っていたんだ」
「しき…がみ?」

(そういえば先刻尊臣さんとお父さんの会話で『式』がどうのこうのって話が…)

「君がどんな成長をしているのか気になって…言葉は悪いけれど長年式神を使って観察して来たんだ」
「! か、観察?!何其れっ」
「ごめん、其れは謝ります!本当にごめんなさい」
「~~~」
「だけどね、其のお蔭で僕は気が付く事が出来たんだ」
「…え」
「僕に必要なのは…十和子ちゃんという其のままの存在だという事に」
「!」
「力があるとかないとか関係なしに…僕はいつの間にか成長して行く君に…恋焦がれていたんだ」
「えっ…! 嘘っ」
「嘘じゃないよ!──もうこうなったら…君に信じてもらうためだったら恥も外聞も捨てる」

そう云った尊臣さんはソファから立ち上がってリビングに置かれているチェストから一冊のノートを取り出し、私に見せた。

其の表紙に書かれた文字を見た瞬間ギョッとした。

だって其処に書かれていたのは【十和子ちゃんの成長日記-4-】というタイトルだったから。

「な…何…これ…」

恐る恐るページをめくると


【1/7 今夜も受験勉強で就寝時間が遅い。頑張り屋なのは解るけれど無理のし過ぎは宜しくないと云ってあげたい】

【3/18 高校の合格発表。見事合格。当たり前だ、どれだけ努力したと思っているのだ。流石僕の十和子ちゃんだと云いふらしたい】

【4/6 高校の入学式。真新しい制服に身を包んだ十和子ちゃんは惚れ惚れする程に美しい。女子校でよかった。共学ならきっとよからぬ者に云い寄られ僕の気苦労も増える事だろうから】


「な…っな、なっ…」

其のノートには事細かに私に関する事柄が記載されていた。

「…式神を使って時々十和子ちゃんの様子を見させてもらっていたんだ…そんな事をずっとしていたら…自然と」
「へ、変態っ!」
「わっ」

私は思わず持っていたノートを尊臣さんにぶん投げた。

「こ、こんな…こんな事をずっと?私の知らない処でずっと…していたって事?!」
「…うん」
「信じられない!そういうのロリコンっていうんだよ、変態っていうんだよ!」
「うん、解っている。立派な犯罪だっていう事も解っている」
「~~~」
「だけど…だけど僕は十和子ちゃんの事が好きだから」
「!」
「十和子ちゃんの力も欲しいけれど…でも其れはおまけみたいなもので、もし力がなくたって僕は…やっぱり十和子ちゃんを知れば知る程に欲しいと思ってしまうんだ」
「~~~~」

言葉がなかった。

だって初めて逢った時の雅なイメージからは到底かけ離れている尊臣さんの性格や行動に驚いて呆れてしまって。

(な、何よ…そんな事してまで…)

一般的には狂気の対象となりうる行動だ。

いたいけな少女の日常を盗み見するなんて行為、やっていい訳がない。


善くない事だって解っているのに──


「本当にごめんなさい。十和子ちゃんは僕を軽蔑していい」
「…」
「僕が望んだだけでは結婚は出来ない。其れは最初から解っていた。でも僕は…十和子ちゃんもきっと僕を受け入れてくれると…時間はかかってもきっと…僕が望んだ未来を共に紡いでくれると…」
「其の自信は何処から来ているんですか」
「…願えば叶う──という先人の教えから…」
「…」

正直呆れてしまって言葉がなかった。

だけど其の根拠なき自信にまんまとハマってしまおうとしている私がいる事にも、私自身が驚いていた。

(こんな変な人なのに…)

見た目からは想像出来ないほどのお粗末な中身。

でも其れは私の事に関してだけに発揮される情けなさなのだろうか。


(34のおじさんのくせに…本当参る)


私ははぁとため息をひとつついた。

そして徐に尊臣さんに向かって告げた。


「私、結婚しません」


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結んで拓いて 8話




『 私、結婚しません』

私が告げた言葉に尊臣さんの顔があからさまに強張ったのが解った。

「…あ…そ、そう…」
「…」
「そう、だよね。僕じゃ十和子ちゃんには相応しくない…よね」
「…そういう事を云っているんじゃありません」
「え」

私は少しそっぽを向きながら続けた。

「結婚は……今すぐの結婚はしません。無理です」
「…」
「だって私、高校に入ったばかりだし、まだ16にもなっていないし…まだ人生始まったばかりだし」
「…」
「だけど…お、お付き合いなら…お互いの事を知るための…交際なら…考えても…」
「!」
「其れ以外は却下です!」
「十和子ちゃん!!」
「わっ!」

ゆるゆると表情を緩めた尊臣さんは私にガバッと抱きついた。

「勿論…勿論其れでいいよ!十和子ちゃんが納得するまで結婚はお預けでいい」
「…」
「十和子ちゃんには悔いのない青春を送って欲しい。だたそんな眩しい青春の中に…ほんの片隅にでもいいから僕の存在があればと思う」
「…そ、ですか」
「うん……好きだよ、十和子ちゃん」
「~~!」

耳元で甘く囁かれてゾクッとした。

(あれ…なんか雰囲気…変わってない?)

普通だったらあんな変態な事をされた相手は受け入れ難いものなのに…

其れでもいいとかって思える私は…

「ねぇ、十和子ちゃん」
「え…」
「お互いを知るための交際をするって事は…君たち世代で考える交際という定義でのお付き合いでいいんだよね?」
「…」
「いいんだよね?」
「……」

(なんか尊臣さんの雰囲気が…)

少しだけ隙間を空けて尊臣さんは私の顔を覗き込む。

其の表情は先刻までの情けないへたれたものとは全く違う、酷く妖艶なものになっていた。

「僕はいつか十和子ちゃんの蕾を咲かせ、そして其の花を散らすよ」
「!」
「其れ、覚悟しておいてね」
「な…なっ…」

そして私はまたギュッと尊臣さんに抱きしめられた。

(雰囲気、変わり過ぎだよ!)

だけどそんな尊臣さんの事が憎からず想い始めている事にじんわりと気が付いた私だった。

(あ…そういえば)

私は気になっていたもうひとつの事を尊臣さんに訊いた。

「あの…先刻チラッと聞こえたんですけど」
「先刻?何を」
「てるおみさんとゆきおみさんが話していた長男の嫁になるには年齢容姿家柄は関係なく…其の後、なんて続いたのかなって」
「あぁ…あんな戯言を気にしていたの?あれは昔の云い伝えだよ。長男の嫁として望ましいのは年齢容姿家柄よりも力を重視するって」
「力って…充電器?」
「そう、充電器の品質だね。其の時の長男によりけりだけれど、長男の力に見合った力の持ち主である女性が好ましいってだけの話だよ」
「…じゃあ私は」
「十和子ちゃんの力は申し分ない。何よりそんなものがなくても僕は妻にするのは十和子ちゃん以外考えられないから」
「!」

(ま、またそういう事を~~)

こんな短い時間の中で尊臣さんを想う気持ちはドンドン高まって行く。

(ヤバい…私もう…)

私の心の中で既に答えは出ている様に思えたのだった。






「──詰めが甘いな、尊臣」
「ははっ、四隅の結界は強まったけれど換気扇口、見逃しているよね」
「親父も輝兄も其の辺にしておけよ。覗き見なんて趣味悪い」
「そういうおまえも大概覗いている様だけど」
「お、俺は心配してるんだ!いくら婚約者とはいえ16にもなっていない生娘手籠めにするとかあり得ないからな」
「いや、いっそ其れ位の甲斐性があった方がもう少しこの五條家も安泰になる様な気がするのだが」
「兄貴の性格じゃなぁ…嫁の尻に敷かれるタイプだ、ありゃ」
「ははっ、違いない!意外と彼女、しっかりしていそうだしな」
「嫁の尻に敷かれるという点ではおまえたち三人は似たり寄ったりだな──まったく似なくてもいい処ばかり似よってからに」
「…」
「…」

「あの…先ほどからなんのお話を」

「あぁ、すみませんな、安部さん。いや、安心してください。十和子さんが我が五條家に輿入れする日はそう遠くないという話です」
「あらまぁ!やっぱり十和子ったら尊臣さんの魅力にやられちゃったのね~もうね、あの子は昔から面食いで…顔から好きになるタイプですからきっと尊臣さんの事も気に入ると思っていたんですよ」
「そうですか、其れはよかった。何はともあれめでたいですな──そうだ、祝いの席でも設けますか」
「まぁまぁ、いいんですか?まだ本格的な嫁入りって訳でもないのに」
「めでたい事は何度祝ってもいいものです。そうと決まれば準備をしなければ」
「親父、俺は帰るぞ。澪と真臣と雫が家で待っているからな」
「オレも。可愛い嫁さんがオレの帰りを待っているんで~」
「何を云っている。祝いの席なのだからみんな本家に呼びなさい」

「「は?」」

「これから十和子さんのお披露目会をする──これは当主命令だ」
「な…何勝手な事を…」
「親父、そんな事したら絶対彼女、怒るぞ!」
「いえいえ、いいんですよ幸臣さん。十和子は周りを固めていけば其処に合わせるようなタイプの子なので」
「へ」
「尊臣もいい歳ですからね…早い処跡取りを作ってくれるといいのですが…いや、これは少し気が早過ぎましたかな?」
「いえいえ~わたしも尊臣さんと十和子の子どもなら早くみたいですわー」

「…なんか、十和子ちゃんが気の毒になって来た」
「同感…」



──私に関する事が私の知らない処で色々画策されていただなんて、未だ尊臣さんに抱きしめられている私は気づきもしなかったのだった


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結んで拓いて 9話(終)




あの日私に云った尊臣さんの言葉──


『僕はいつか十和子ちゃんの蕾を咲かせ、そして其の花を散らすよ』


其の言葉の意味を私は今では身をもって知ってしまっていた。


 


「どうしたの、尊臣さん!」
「…あぁ、いらっしゃい…十和子ちゃん」

五日振りに訪れた尊臣さんの家でとんでもない光景を目にした。

ベッドに死人の様に寝転がっている尊臣さんの着物はあられもない程に乱れていて、そして何より其の顔には生気がなかった。

「また無茶な依頼、受けたの?!」
「はは…少し…差し迫っていたのでつい…」
「もう!私と逢えない期間が続く時は大きな依頼を受けないでって云っていたのに」
「本当…心配かけてすみません…」
「…」

力なくぐったりと私にもたれかかった尊臣さんの頬に掌を添えて私はチュッと其の唇にキスする。

「んっ」
「…っ」

最初は重なるだけの軽いキスから直ぐに尊臣さんから深いキスを求められた。

「んっ、んっ」
「ふっ…んん」

目には見えないものを私から奪おうとする様に激しく口内を蹂躙する。

「はぁはぁ…ぁ…十和子、ちゃん…」

ほんの少し顔に赤みが差して来たのを確認して私は尊臣さんにまたがった。

「するわよ」
「…はは…来た早々…大胆ですねぇ」
「そんな悠長に構えていられないでしょう!ほら、脱がすわよ」
「わっ」

尊臣さんの乱れていた着物はいとも簡単に脱がせる事が出来た。

そして現れたのは其処だけ力が漲っているかの様に雄々しくそそり勃つ尊臣さんのモノ。

「ん…っ」
「あ…ふっ」

私は其れを手にしてゆっくりと自身の中に挿入れる。

「あっ、あぁっ」
「うっ…あっ…」

ジュブジュブと厭らしい音を立てて奥へと滑り込んで行く其の快感にブルッと体が震えた。

「あ…はぁん…」
「あぁ…十和子ちゃんの中…ヌルヌルだねぇ」
「そ、そういう事…んっ、云わないの」
「ん…ごめんね、あまりにも気持ちがいいので…はぁ…凄い…凄い力が…繋がっている処から入って来るよ」
「だ…だからぁ…そういう実況…要らな──あっ」
「ふふっ…腰振っちゃって…本当厭らしいね、十和子ちゃん」
「~~~!」

(誰が私をこんな風にしたと思っているのよ!)

尊臣さんのモノをヌチャヌチャと味わっている間に考えてしまうのは余計な事ばかりだ。


尊臣さんとこういう関係になったのは、交際を始めてから割と早かったと思う。

尊臣さんは仕事で消耗した霊力を私との接触で補っていた。

其の接触も最初は手を繋ぐとか体を抱きしめるとか、そんなごく軽いものだった。

だけど直ぐに触れ合いは深くなって行った。

尊臣さんからキスを強請れ、そしてあっという間に体を求められた。

其の頃にはすっかり尊臣さんに溺れていた私は求められるまま尊臣さんに手折られてしまった。

まさに尊臣さんに蕾だったものを開花させられ、そして其の手で散らされてしまった──という訳だった。

一度そうなってしまえばあとはズルズルと官能の世界に引きずり込まれて行った。

大人である尊臣さんは私を自分好みに開発して行き、其れを私も素直に受け入れてしまい、こうして霊力回復目的のセックスは頻繁に営まれる事になっていた。


──処女喪失から二年


「十和子ちゃん、本当にいいのかい?」
「え、何が」

とりあえず元の霊力分を私から回収した尊臣さんは元気になっていた。

気怠い体をベッドに投げ出している私は尊臣さんから優しく髪を梳かれていた。

「卒業後の進路。本当に其のまま僕のお嫁さんになってくれるの?」
「うん…其のつもりだけど」
「やりたい事とかないの?」
「え」
「大学に行って勉強したいとか、就職して働きたいとか…そういう夢って十和子ちゃんにはないのかい?」

優しい口調で訊かれた事に対して私は迷いなく答える事が出来る。

「私、この二年間ずっと考えて来たんだけど…やっぱり尊臣さんのお嫁さんになる事以外やりたい事がないなって解った」
「え」
「勉強にしても仕事にしても…私にとって其れ等は全て尊臣さんの元にあるんだって解ったから」
「…」
「尊臣さんの仕事をサポート出来る様に勉強したいし傍についていたいと思ったし、尊臣さんが疲れた時は私で癒してあげたいって思ったの」
「…十和子ちゃん」
「でもね、五條家の次期当主の妻って感覚で嫁ぐという気持ちじゃないんだ。本当単純に尊臣さんの奥さんとして嫁ぎたいって感じで──って、何?!」

いきなり尊臣さんが私をかき抱いた。

「其れで充分だよ。十和子ちゃんがそう思ってお嫁に来てくれるなら…其れだけで僕は幸せ過ぎて…」
「…もう、本当尊臣さんって私がいる時といない時では全然性格違うんだから」
「違っていいんです。本当の僕は…十和子ちゃんだけが知っていれば…其れでいいんです」
「…そっか」

普段の尊臣さんはとても思慮深い物静かなクールな人というイメージで様々な人を魅了し続けている。

だけど本当に尊臣さんは──

「十和子ちゃん…もう一回してもいい?」
「あっ…み、耳朶…噛まなぃでぇ…あんっ」
「ふふっ、本当耳朶弄るとすぐに濡れちゃうね」
「ひゃん!あ…いきなり指…い、入れないで…」
「指じゃダメ?もう大きいの挿入れてもいいの?」
「ふっ…ぃ、意地悪っ」

こんなにも甘くてえっちでヘタレで情けなくて…

凄くギャップのある人なんだよ。


(でもそんな尊臣さんだから好き)


私で役に立つならこの体ごと尊臣さんのために捧げるわ。

其れが私が持って生まれた運命ならば従うだけ。



何処までもあなたと共に在り続け、世のため人のためにひっそりと暗躍し、そしてまたひとつ歴史を紡いで行きましょう──




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