「ただいま」
「あっ、お帰りなさい、天眞」

帰宅した天眞を私はいつもの様に笑顔で出迎えた。

天眞はネクタイを緩めながらチラッと私の顔を見た。

「なぁに?」
「…いや、何かいい事でもあったのか?」
「どうして?」
「凛子、なんか顔がニヤけている」
「…」

(いけない…つい天眞をとっちめる事を考えていたら…)

此処に来てから天眞には随分と苛められて来た。

尤も其の苛めも根幹は愛のあるものだったから赦せたのだけれど…

(でもいつまでもやられっぱなしの私じゃないのよ!)

久し振りに私が優位に立てそうな事態が来るのかと思うとどうしても気持ちが高揚してしまうのだった。


「天眞、先にご飯にする?其れともお風呂──」
「其の前に話がある」
「え」

勿体振って焦らそうと思っていた矢先、天眞が真面目な顔をして云った。

「話って?」
「此処に座れ」
「…」

トントンと天眞の隣の畳を叩かれ、私は其処に座った。

「えーっと…だな」
「うん」
「……其の」
「…」
「…」
「…何なの?」

何故か天眞が云い難そうに口ごもった。

こんな天眞は珍しかった。

「だから、其の…結婚式の件なんだが」
「うん」
「…すまないが、もうあと半年ほど…先に延ばさせてくれないか」
「は──?」

(何を云うのかと思えば)

「あと半年…いや、もしかしたらもう少し先に…なるかも」
「…」
「というか、具体的な式の話はしばらく止めないか?」
「……」

(なんで…なんで急にそんな事を)

天眞だって私のウェディングドレス姿を見たいと云っていたのに…

どうして急に式を先延ばしにしたがっているのだと考えると──

(──あぁ、そう。そういう事)

「…凛子?訊いているか」
「~~~天眞ぁぁぁぁぁぁ!!」
「!」

私は今まで抑えていた感情を此処に来て一気に爆発させてしまった。

1ase
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