「天眞!あんた、私に隠れてコソコソと浮気してんじゃないわよ!」
「はっ?…浮気?」
「とぼけるんじゃないわよ!私、ちゃーんと知っているんだからね!今日、昼間ホテルで密会していた髪の長い女の事よ!」
「!  なんで凛子が其れを──」

途端に天眞の顔色が青くなった。

気のせいか頬を滑る汗の量も増えている様な気がした。

「やっぱり…やっぱりやっぱり~~浮気していたのねぇぇぇーこんの浮気男ぉぉぉ──!」
「わっ」

私は怒りに任せて天眞に飛びかかり何度も其の頬を叩いた。

「赦さない!赦さない、絶対に赦さない!!」

天眞の体を押し倒し馬乗りになってパンパンと何度も叩く。

其の間天眞は目を瞑ってジッとされるがままになっていた。

「私の事を好きって云っていたのに…!愛してるって云ったくせに…!そんな事を云ったこの口で違う女にも同じ様な事を云っていたの?!」
「…」
「天眞っ!何とか云いなさいよ!!」

天眞の頬は赤くなり、叩いている私の掌もジンジンと痛かった。

「云い訳のひとつも出来ないって云うの?!天──」
「…お嬢様」
「!」

呟く様に放たれた其の言葉はとても久しぶりに訊いた呼称だった。

「な…っ…なっ」
「…もう、お止め下さい…お嬢様の白魚の様な手が紅葉の様に真っ赤に染まっています」
「~~~な、何云って……!」

痛む掌が差し出された天眞の両手で握られた。

「お嬢様、この天眞が優しく労わって差し上げましょう」
「~~~」

(なんで…なんでこんな時に…執事モードにっ)

久し振りに訊いた天眞の優しい口調に不覚にも胸がドキンドキンと高鳴って居た堪れなくなった。

ゆっくりと上体を起こした天眞の頬は私に叩かれたせいで真っ赤になっていた。

「お嬢様、痛いでしょう?」
「……」

天眞に擦られている赤い掌が酷く熱かった。

「俺なんかの頬を叩いてお嬢様の清らかな手を痛めてはなりません」
「…天眞」
「はい」
「…頬、痛いでしょう」
「いいえ、お嬢様が受けた痛みに比べればこんな痛みは何でもありません」
「…」

何故か私はこうなった経緯の事をコロッと忘れて、昔に戻った天眞の優しい執事モードに酔いしれてしまっていた。

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