(……)

天眞からのメールを受け取って私は考えた。

そして其処で私はちょっとした悪戯心が芽生えた。

【其れじゃあお昼どうするの?お弁当がないと困るでしょう?】

すっとぼけたメールを返信すると直ぐに新たなメールが届いた。

【出前でも取るから気にするな】

(…出前、ねぇ)

其のメールを読んでふふっと笑いが込み上げた。

携帯で時間を観ると11時だった。

(よーしこのまま行ったら丁度お昼前には着くよね)

私は天眞にサプライズを仕掛けようと思った。

いきなり現れて『お弁当届けてあげたわよ』と云って天眞を驚かせてやろうと。

(ふふっ…天眞、どんな顔をするかしら)

そんな事を想像するだけで可笑しかった。

ついでに天眞の会社で働く人に愛想よく振りまいて、社長の婚約者としていいイメージを植え付けられたらいいなと思った。

(天眞は小さい会社だって云っていたけど)

どれくらいの人が働いているのか知らないけれど、きっとビルの1室を借りてこじんまりと営業しているのだろう。

(んー私でも何かの役に立てばいいんだけれど…)

会社の事はよく解らないけれど、万が一人手不足な感じだったらパートとして共働きしようかなと思った。

(あぁ!其れ、いいじゃない~)

天眞と一緒に二人三脚的な感じで会社を盛り立てれば益々私たちの仲は深まるんじゃないか。

(いい、いいよーなんだか共働きって響き、いいかも!)

そんな妄想で浮足立った私は、あっという間に携帯が場所を示した天眞の会社【リンテン】が入っているだろうビルに到着した。

「えっと…何階かな」

会社名を確認しようとビル内に入った瞬間、ギョッとした。

「…何…此処…」

ロビーだと思われる其の空間は広く開かれていて大勢の人が行き交っていた。

「…えっ」

入って直ぐ正面にカウンターが見えた。

中に受付の女性がふたりいて、其の背後に【RINTEN】と社名のロゴが大きく掲げられていた。

「えっ…え…」

思わず硬直してしまって其処から動く事が出来なくなった。

するといきなり背後からポンッと肩を叩かれた。

「!」

私の肩を叩いたのはありがちな制服を着こんだ警備員だった。

どうやらオロオロしている私は不審者だと思われた様だ。

「失礼ですがご用件を窺っても宜しいですか?」
「あ、あの…わ、私は…」

あまりにも驚き過ぎて上手く言葉が出てこない。

先程に続く挙動不審な仕草をしてしまって其れが余計怪しく映ったのか、警備員の表情は益々険しくなった。

「申し訳ありませんが少し此方に来ていただけますか」
「!」

ガッシリ腕を掴まれ何処かに連れて行かれそうになった瞬間

「凛子さま?!」
「!」

遠くから聞こえた声に体が撓った。

(誰っ)

私と警備員の元に駆け寄って来たのは先ほどカウンター内にいた女性のひとりだった。

「まぁ…まさか凛子さまが…っ」
「…えっと…あなた、は…」
「お忘れですか?以前早乙女家で侍女をしていた牧山です、牧山恵美子」
「まきやま…えみこ…?」
「凛子さまの身の回りのお世話をさせていただいていたのはほんの一年足らずですが…覚えておいでではないんですね」
「…」

また私は茫然としてしまった。

私が茫然としている端で彼女が警備員に何かを伝えていて、其れを訊いた警備員は酷く驚き、いきなり私の前で土下座して謝り始めた。

「も、申し訳ございません!まさか…まさか加々宮社長の奥様だったとは!」
「お、奥様ぁ?」

此処での私の肩書きがとんでもないものになっている事にまた驚き、そして私は訳の解らなさが多過ぎて頭の中がパニック状態になっていたのだった。

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