昨夜幽霊に襲われた時に助けられた状況の謎は解けた。

だけど

「でもなんでいきなり霊に襲われたんですか?今まであんな目に遭った事なかったし、霊感だって全然ないんですよ」
「あぁ、其れについての話をしてからの方が昨日の事についての理解が早いかな」
「…どういう事ですか?」
「まずは、澪ちゃんの話からなんだけど」
「は?澪?」

どうして此処に澪の話が出て来るのだろうと不思議だったけれど、ちゃんと輝臣さんの話を訊こうと思った。

「澪ちゃんはね霊に憑依されやすい、いわゆる霊感の強い子だったんだけど其れを彼女の亡くなった父親があらゆる霊災から彼女を護っていた。そして其れは同時に澪ちゃんの近くにいた君も護って来た、という事だった」
「は?澪のお父さんが澪だけじゃなくて私も?其れはどうして」
「つまり昔から澪ちゃんと仲が良く、常に一緒にいた君も弱いながらも澪ちゃんに纏わりつく霊の影響を知らず知らずの内に受けていたという事なんだよ」
「う、嘘…!」

(そんな事、全然知らなかった)

「そう悟られない位澪ちゃんの父親は君も護って来たって事なんだけど、其の父親の霊をよりにもよって幸臣が昇華させちゃったんだよね」
「えっ、五條先輩が?!なんで」
「本来なら亡くなった人はちゃんと成仏させてあげなくてはいけないという理(コトワリ)を、澪ちゃん自身の強い負の念で現世に留めて歪めてしまっていたという事が大きな理由なんだけどね」
「…本当はいてはいけない状況を澪が作っていた…って事?」
「そう。其れを見かねて幸臣は本来あるべきの正しい行為をしたんだけど、其れによって澪ちゃんと水穂ちゃんを護って来た存在が無くなってしまったという訳」
「…」
「まぁ、澪ちゃんは代わりに幸臣の加護を得て、其れがきっかけでふたりは親しくなって付き合い出したって裏話があるんだけど」
「わ、私は…?」
「──其処が問題だよね」
「…」
「流石の幸臣も水穂ちゃんが澪ちゃんの影響を受けていた状態までは気が付けていなかったみたいなんだ」
「そ、そんな…」

なんて恐ろしい事を云われているんだろうと思った。

今までそういった関係の怖い目になんて遭った事がなかったと思っていたのは、私の知らない処で護ってくれていた人がいたからだなんて。

(あ…!でも)

「あの、でも澪のお父さんが護ってくれなくなって随分経ちますよね?其の、先刻五條先輩がいなくなったお父さんの代わりに澪を護って、其れがふたりの付き合うきっかけになったって」
「あぁ、そうだね。かれこれ四年程前になるかな」
「其の間、私は何も霊的な怖い目に遭った事がないですよ?」
「だからね、澪ちゃんから受けていた影響って本当に微妙なものだったんだよ。其れに就職で澪ちゃんと一緒にいる時間も学生時代よりはうんと減ったでしょ」
「…確かに」
「ぶっちゃけごく普通に生活している分にはそんなに影響を受ける事はない程度の霊しか寄って来ていなかった。其れに元々霊って明るい性格の人間には近寄りがたいものだから今までは君の持つ性格に救われていたって事なんだろう」
「明るい性格…」

そういうものなんだ…と思った。

確かに私はずっと明るく前向きな性格だと自負して来た。

そりゃ悩んだりする事だってあるけれど、何とかなるさ精神で鬱々とした気持ちは早々に吹き飛ばして来たのだった。

「だけど其の本来持っている君の気質が此処数ヶ月で乱れているでしょう」
「え…」
「思い当らない?長く鬱々と悩んでいる事」
「……」


──其れって…



「で、話は昨日の事に戻ります」
「え」
「昨夜、君を襲った霊、あれは生霊だよ」
「い、生霊?」
「死んだ霊魂じゃなくて、生きている人間の強過ぎる思念が実体化した霊って事」
「!」

(幽霊じゃなかったって事?!)


生きている人間の霊って…


其れって…


「…誰?」
「…」
「誰の…霊、なんですか」
「…」


本当は何となく解っている様な気がした。

昨日の生霊がしつこく私に語り掛けていた言葉を反芻すると…

「…は、ははっ…やっぱり…私はもう…」
「早まらないで、水穂ちゃん。ちゃんと話をした方がいい」
「…」
「ちゃんと話を訊いて、真実を知るんだ。もしかしたら相手の一方的な思慕だって事も──」
「…ありがとうございます、輝臣さん」
「…」
「本当に…ありがとうございます」
「…水穂ちゃん」


私は泣きそうになる気持ちをグッと堪えて、ぎこちない笑顔を輝臣さんに向けながら真実を知る決意をしたのだった。

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