《…消エテ…消えテ…今すグに…アノ人ノ前かラ……消エて》


(な…何を云ってるの…)


《アノ人ハ…あタシのもノ……邪魔…消エテ》


(く…苦しいっ)


黒い靄が私の間近まで迫ると息が出来なくなる様な圧迫感を感じた。

苦しさと恐怖感と、死んでしまうんじゃないかという気持ちから絶望的になった。


(誰か…誰……かっ…)


薄れゆく意識の中、急に背中が燃える様に熱くなった。

そう感じた瞬間


《ギャッ!》


いきなり目の前にあった黒い靄が爆ぜる様にいなくなってしまった。

「………あっ」

靄がなくなると同時に私の体は動いた。

途端にガタガタと震え出す体。

「な…何…何…今の…」

震える体を懸命に動かし、私はサイドテーブルに置いてあるスタンドの灯りを点けた。

シンッと静まり返る部屋。

其の中には私の荒い息遣いだけが溢れた。

「今の…幽霊…?」

どう考えてもそうとしか思えなかった。

だけど幽霊を見たのは初めての事で今までそんなものを見る様な霊感を持っているとは微塵も思わなかった。

この部屋に越して来て一年以上経つというのに今みたいな霊現象に遭遇した事はなかった。

「なんで?なんでいきなり…」

訳の解らない出来事に戸惑うばかりの私だった。








『えっ、幽霊?!』

「…うん、多分…」

数時間後、私は朝の早い時間だというのに澪に電話をかけていた。

結局あの後から眠る事は出来ず、部屋中の電気を点け明るくして一晩中起きていた。

そして空が明るくなると同時に部屋から飛び出し、早朝から空いているカフェに身を置いている状況だった。


『大丈夫?ねぇ、よかったら家に来ない?まだ幸臣さん出勤前で家に居るから見てもらうといいよ』

「あ…」

澪の其の言葉で私は思い出した。

(そうだ…五條先輩って幽霊とか心霊関係の事に詳しかったんだっけ)

其の事をすっかり忘れていた私は藁にも縋る気持ちで澪の言葉に甘えようと思った。



「えっ」

いきなり持っていた携帯が後ろから伸びて来た手によって取り上げられていた。

「もしもーし、澪ちゃん?俺、輝臣。あのねぇ水穂ちゃんの件は俺が何とかするから気にしなくていいよ~」
「なっ!」

其処には五條先輩のお兄さんの輝臣さんが居た。

相変わらず派手な格好をして色男のフェロモンを無駄に放出している存在にこんな時だというのにときめいてしまった。

「うん、そう。幸臣には事情を話してあるから訊くといいよ。うん、うん、大丈夫だって~いくら俺だって澪ちゃんの大事な友だちに変な事しないから安心して?」

(な、何を話しているの?!)

私の携帯で澪と話している輝臣さんを私はただ茫然と眺めているしかなかった。

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