澪の家を出て、自宅マンションに着いた時には20時を回っていた。

冷蔵庫の中にある残り物で夕食を済ませたり、お風呂に入ったりしているとあっという間に23時を回っていた。

「はぁ…疲れた。そろそろ寝ようかな」

ひとり暮らしの部屋で私の言葉に相槌を打ってくれる人はいない。


(…やっぱり何も来ていない)

昼間打った雄二へのメールの返信はなかった。

(これってもう…そういう事、なのかな)

今日参拝しに行った神社で願った事。

其れは

──もし、もう雄二の気持ちの中に私の存在が無くなったのなら別れ話を切り出して欲しい

普通に考えればこれだけ連絡がなかったら雄二は自然消滅を狙っているんじゃないかという気になる。

付き合い始めてから三年。

世間一般にいう一番危ない交際期間のど真ん中にいる。

就職を機にすれ違いが多くなって、お互い身近にある関係に心が動かされる事が多々あるのだと思う。

(私だって…そんな誘惑に時々負けそうになる)

そう思った時、頭の中に浮かんだのは今日逢った人の事。

(! な、なんでお兄さんの事をっ)

横になっていたベッドから思わず起き上がってブンブンと頭を振った。

(はぁ~ダメだぁ…本当にダメだ)

私はこういう中途半端な状況にあるのが嫌いだ。

元々白黒ハッキリしたいという竹を割ったような性格が故、失敗した事も、失ったものもあった。

だけど事、恋愛に関しては其の性格が顕著に表れて…

(もういっその事、私から云っちゃおうかな)

手に持つ携帯をスッと指先で払う。

メール画面を前にどの様な文言だと差し障りがないだろうかとしばし悩む。

(…)

だけど結局雄二にメールを送る事は出来なかった。

其れなりに付き合った期間があり、幸せな時を過ごした記憶がある分、素っ気なくメールで別れを切り出すという事がどうにも出来ないでいたのだった。

「あぁ、もう!寝よ寝よ」

枕元にボンッと携帯を放り投げて、私は布団に潜り込んだ。

(本当…雄二から云ってくれればいいのに…そうしたら私だって…)

モヤモヤした気持ちを抱きながらも、私は眠りの淵に落ちて行ったのだった。










《──……えテ…》



「…ん」



《……消……ッ前カラ…》


「ふ…っ」


眠りについてからどれくらいが経っただろう。

真っ暗闇の中から聞こえた声で徐々に意識が覚醒して来た。



《…はアタし……モの…なンダ…》



「…何………っ?!」

薄っすらと目が開き、其処に飛び込んで来た光景に驚き、そして一瞬の内に体は硬直した。

(や…な、何…体が…動かないっ)

私の目の前には真っ黒な靄(モヤ)みたいな塊が浮かんでいた。

其の塊の中に光るちいさなふたつの光がまるで私を凝視している目の様に見えた。

(これ…人?ゆ、幽霊…?!)

体ばかりか視線までも凍り付いたかのように動かせなくなってしまった私だった。

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