若干震えがちに握られていた私の手の中にある一枚の写真。

其の写真は両家の親族の集合写真だった。

(嘘…これ…この人!)

其の中のひとりが異様に目立っていて、直ぐに私の視界の中に入り込んでいた。

「澪!澪っ」
「何、どうしたの?」
「これ…これ、誰?!」
「え」

私の声に驚いた澪はキッチンから私の元にやって来て、私が指差す写真に目を止めた。

「この派手な頭と顔立ちの人!」
「あぁ、この人は幸臣さんの直ぐ上のお兄さんの輝臣さんだよ」
「てるおみ?お兄さん?!」
「うん。幸臣さんにはお兄さんがふたりいて、輝臣さんは幸臣さんの2歳上のお兄さん」
「……嘘」


あの人…


あの派手ないでたちの変な人が…


(五條先輩のお兄さんなのぉぉぉー?!)


まさかという気持ちが大きかった。

だって由緒正しい五條家の、五條先輩のお兄さんなのに親族の中で唯一明るい頭の色をしていて、全体的に溢れる硬派な雰囲気の中に異質にも思えるひとりだけ浮いている軟派な存在。

(絶対五條家の血筋とは思えない!)

驚き過ぎて其の写真から視線が逸らせない私に澪は色々教えてくれた。

「輝臣さん、派手でしょう?でも見かけよりも凄く優しくて人懐っこくて、二次会の時も率先して幹事引き受けてくれたの」
「…」
「水穂、二次会で逢わなかった?紹介すればよかったけど、なんか輝臣さん一ヶ所にジッとしているタイプじゃなくていつもフラフラしているから中々所在がつかめなくて…」
「…」
「…水穂?」
「澪、もしかしてこの人…お兄さんに私の事、何か話していたりする?」
「え……あ…うん、世間話的な流れで、ずっと仲良くしている親友で…って程度の事を」
「其れだけ?顏、しゃ、写真とか見せたり…」
「え?あ…二次会の時にあれ誰?的な訊かれ方したかなぁ…あの時は色んな人にそういう事訊かれててちょっとよく覚えていないんだけど…どうして?」
「あ…ううん…なんでもない」
「水穂?」

そうか…

五條先輩のお兄さんで、澪から私の話を訊いていて…

其れで私の事を知っていたって訳か。

(何かの拍子に私が澪の友だちで…親友だって知っていたから)

だから名前を知っていた、という事なのか。

(なんだ、謎は解けたじゃない)

単に私がお兄さんの存在を知らなかったからあの一連の出来事は不思議な事として受け取ったけれど、向こうは私の事を知っていたのだ。


(…あ、でも)

まだ不可解な事はあった。


『君、疲れやすいから気をつけなさいね』


(あれはどういう意味だったのかな──?)

其れは言葉通り受け取れば、私が疲れた顔をしていた事から導かれた言葉。

(そういえば先刻澪にも疲れているって云われたっけ)

もしかして単に私が疲れやすい雰囲気を醸し出していたから気遣われただけ──という事なのだろうか?

「なんだ…そうだったのかぁ」
「水穂?ねぇ、本当どうしたの?」
「あ、ううん。何でもない。私は元気だよ?」
「…そう?空元気じゃなくて?」
「ないない!本当ちょっと仕事が忙しくてね…だけど平気。澪とお喋りしたら元気出て来たから」
「なぁに、其れ。おかしな水穂」

柔らかな笑みを見せた澪に云った言葉は嘘じゃない。

(本当、澪といると元気になれるよ)

私はこのひとときだけ、連絡の取れない雄二の事、不思議な五條先輩のお兄さんの事なんかは頭の中から消えていたのだった。

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