私が愛しているのは父です。

いえ、正確には義父──ですが。

義父と出逢った6歳の時から私は義父の虜になってしまいました。

愛する義父を私だけのものにしたいとずっと思っていました。


──だけどどんなに愛していても義父は母のものなのです






「静流さん、朝ですよ!起きてください」
「…んっ」

私の一日はお手伝いさんの咲子さんに叩き起こされる事から始まる。

「おはようございます、静流さん」
「…眠い」
「そうですね、眠いですね。でももう起きないと学校、確実に遅刻しますよ」
「…」

容赦ない咲子さんの声に渋々ベッドから這い出る。

「…智広さんは?」
「もう会社です。朝一で会議があるんだそうですよ」
「…ふぅん」

(また会議か…)

もう何日逢っていない?

(というかうちの会社、大丈夫なの?)

「静流さん、会社の会議は別に経営不振時だけにある訳じゃないですからね」
「わっ、な、なんで私が考えている事解ったの?!」
「もう何年静流さんのお世話をして来たと思っているんですか?静流さんが何を考えているのか、其の表情から読み解けます」
「…さっすがぁ」

少し皮肉めいて呟いてみた。

「さあ、顔を洗って朝ご飯を食べてください」
「はぁい」

私の皮肉にはすっかり慣れている咲子さんは大して態度を変える事無く忙しく行動していた。


私は宇都宮 静流(ウツノミヤ シズル)

この春高校生になったばかりの15歳。

私の家は【UTSUNOMIYA】という、まぁそこそこ有名な老舗製菓会社を営んでいた。

現在代表取締役社長なのが私の義父、宇都宮 智広(ウツノミヤ チヒロ)だった。


「いただきます」

目の前に並べられた洋風の朝食を広いダイニングでひとり味わう。

いつもの光景。

もう慣れ過ぎて寂しいとは思わなくなっていた。

「…」

義父の智広さんは婿養子だった。

【UTSUNOMIYA】の一人娘だった母は親に勧められた政略結婚で私を産んだ。

だけど私の父は若い従業員の女と不倫して母に家を追い出された。

其れは私が2歳の時の事で、私は実の父の顔を全く覚えていなかった。

そして私が6歳の時、母は【UTSUNOMIYA】の営業部に勤めていた智広さんと再婚した。

初めて智広さんと顔を合わせた瞬間、其のあまりにも端正な顔、スマートな物腰からすっかり私は心を奪われてしまった。

6歳だというのに早熟だと当時既に私の世話係になっていた咲子さんは語った。

確かに生意気で早熟な子どもだとは私自身も思う。

だけど

子ども心にも智広さんの魅力はとても壮絶なものだったのだ──



「いってきます」
「あ、静流さん、今日は兵馬さんが学校まで送ってくださるって先ほど連絡が」
「えっ、兵馬さんが?」

私はいつも学校まで専属の運転手さんの車で送り迎えしてもらっていた。

私自身は普通に電車通学したかったのだけれど、万が一誘拐といった犯罪に遭ったら大変だという周りからの説得でそんな大げさな送迎を余儀なくされていた。

(兵馬さんの運転か…)

胸にほんの少しモヤッとした想いが染み込んだのを感じながら、私は車の待つ場所に向かった。


1sil
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