FlowerLeaf

*AriaLien Sub BLOG*

2018年01月

暴君と秘密の彼女 8話



「ただいま」
「あっ、お帰りなさい、天眞」

帰宅した天眞を私はいつもの様に笑顔で出迎えた。

天眞はネクタイを緩めながらチラッと私の顔を見た。

「なぁに?」
「…いや、何かいい事でもあったのか?」
「どうして?」
「凛子、なんか顔がニヤけている」
「…」

(いけない…つい天眞をとっちめる事を考えていたら…)

此処に来てから天眞には随分と苛められて来た。

尤も其の苛めも根幹は愛のあるものだったから赦せたのだけれど…

(でもいつまでもやられっぱなしの私じゃないのよ!)

久し振りに私が優位に立てそうな事態が来るのかと思うとどうしても気持ちが高揚してしまうのだった。


「天眞、先にご飯にする?其れともお風呂──」
「其の前に話がある」
「え」

勿体振って焦らそうと思っていた矢先、天眞が真面目な顔をして云った。

「話って?」
「此処に座れ」
「…」

トントンと天眞の隣の畳を叩かれ、私は其処に座った。

「えーっと…だな」
「うん」
「……其の」
「…」
「…」
「…何なの?」

何故か天眞が云い難そうに口ごもった。

こんな天眞は珍しかった。

「だから、其の…結婚式の件なんだが」
「うん」
「…すまないが、もうあと半年ほど…先に延ばさせてくれないか」
「は──?」

(何を云うのかと思えば)

「あと半年…いや、もしかしたらもう少し先に…なるかも」
「…」
「というか、具体的な式の話はしばらく止めないか?」
「……」

(なんで…なんで急にそんな事を)

天眞だって私のウェディングドレス姿を見たいと云っていたのに…

どうして急に式を先延ばしにしたがっているのだと考えると──

(──あぁ、そう。そういう事)

「…凛子?訊いているか」
「~~~天眞ぁぁぁぁぁぁ!!」
「!」

私は今まで抑えていた感情を此処に来て一気に爆発させてしまった。

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暴君と秘密の彼女 7話




──ハッキリいってどうやって帰って来たのか記憶にない

というかよく無事に家まで帰って来られたなというのが正直な感想。


「はむっ…ん…っ、んっ」

私は持ち帰ったお弁当を黙々と食べていた。

「ん、んっ」

相変わらず粗食な弁当であっという間に食べ終わってしまった。

ゴクゴクとお茶を流し込んでドンッと湯呑を卓袱台に置いた。

「て~ん~まぁぁぁぁ~~~!」

私の中は訳の解らない怒りでいっぱいだった。

天眞を信じたいという気持ちと、でももしかしたら私は天眞に騙されているんじゃないかという疑惑。

其の両方がギリギリとせめぎ合っていて、どうしようにもないどす黒い気持ちとなって私の心を波立たせた。

(なまじ大金を手にした男は色に走るっていうし!)

いつか何処かで見聞きした中途半端な知恵を持ち出し益々落ち込む。

だって天眞の会社が大きく成長している事実を知らなかったから、この質素倹約の生活も納得出来ている処があった。

早乙女が負った借金を天眞が一生懸命働いて無くしてくれたと思えばこそ申し訳なさと感謝の気持ちでいっぱいだった。

だから最初こそ厭で厭で仕方がなかったこの質素な生活だって今では身の丈にあったものだと受け入れている。


其れなのに──


(天眞、お金持ちになっているじゃない!)

其れを隠されていたという事にも腹が立つし、其れになんてったって

(昼間の女は誰なのよ!)

結局は其れがこの腹立たしい気持ちの一番の元凶なのだ。


「ふっ…ふふっ…」

生憎と私はただ黙って浮気されてメソメソ泣いている様なしおらしい女じゃないのよ。

(帰って来たらみっちり問い質してやるんだから!)


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暴君と秘密の彼女 6話



──だけど

天眞に限って浮気は考えられないと自分自身に何度も云い訊かせた。

(そうよ!天眞は私にゾッコンなんだから…浮気なんて事…考えられない!)

必死になって雑念を払うも、天眞と其の顔が見えない女性はやけに親密そうだった。

(なんか…やけに込み入った話しているっぽい)

席境の観葉植物に身を隠しながらふたりの様子を見ている私は傍から見たら明らかに不審者だろう。

(あぁ…もう、いっその事ふたりの前に出て行こうかしら)

そんな気持ちになった矢先、いきなり天眞と女性はソファから立ち上がった。

(!)

慌てて低頭姿勢を取る。

幸いにもふたりは私が身を隠している席とは反対側から回ってロビーを抜けて行った。

(今度は何処に)

私は見つからない様にふたりの後を付けて行くけれど

(えっ)

ロビーを抜けたふたりの姿は曲がり角の突き当りのエレベーター前で消えていた。

(…行き止まりって事は…ふたりしてエレベーターに乗ったって事?)

其れはどういう事かというと…

(つまり…つまり天眞とあの女は……部屋に行ったって事で…)


其れはつまり──


茫然としている私の目には上の階へ上がって行くエレベーターの階数表示の点滅の赤色しか映っていなかった。


天眞に限って浮気なんて考えられない。

だって私にゾッコンで結婚するって云ってくれたし…

会社の人にだってまだ結婚前の私を奥さんだって云っている位だ。

(そうよ…天眞は私を裏切らない)

何度も何度もそう心の中に云い訊かせる。

だけど

(じゃあこの行動の真意は何だって云うのよ!)


私の知らない処で繰り広げられた疑惑の数々。

其れはいくら私が天眞を信じていても払拭出来ないくらいの怪しさでいっぱいだったのだ。

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暴君と秘密の彼女 5話



お昼ご飯は出前を取ると云っていた天眞。

一度出社したら退社するまで社外には出ない天眞。

(でも今の天眞は其のふたつとも当てはまらない行動をしている)

そんな普遍的な行動に厭な予感を覚えた私は、こっそり天眞の後をつけていた。

颯爽と歩いて行く天眞は通りすがりにある何店かの飲食店を素通りして行く。

(やっぱりおかしい!)

食事に出たのなら其の辺の店に入ったっていいはずだ。

其れこそ和洋中、カフェにファミレスなど、ごく短い距離に様々な種類のお店が軒を連ねているのだから。

(もう、何処に行こうって云うのよ!)

見つからない様にコソコソと、そして歩幅の広い天眞の後をついて行くのはとても大変だった。




「はぁ…はぁはぁ…」

息が上がって来てそろそろ体力の限界──という処でようやく天眞が何処かのビルに入って行った。

だけど直ぐに其処がただのビルではない事に気が付いた。

【オールドシーズンホテル】

(ホ…ホテル?!)

掲げられていた看板にギョッとした。

(なんでこんな処に?!)

私は見失った天眞を追う様にホテル内に入って行った。

中はよくある普通のビジネスホテル、という感じの雰囲気で人がまばらにいた。

天眞の姿を探しキョロキョロしていると

(あっ!)

ロビー奥にソファが幾つも置かれている場所があり、其の一角に天眞の後姿を見つけた。

だけど其処にいたのは天眞ひとりではなかった。

(…嘘)

私の方に背を向け、天眞と其の隣に髪の長い女性が座っていた。

其れはまるで仲のいい男女が密会をしている様な雰囲気を醸し出していた。

(まさかこれって……う、う、浮気現場?!)

そんな考えが一瞬私の頭の中にこびりついたのだった。

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暴君と秘密の彼女 4話



「凛子さま、このビル全てが【リンテン】の本社社屋です」
「…」
「主な業務はレンタル業ですが、最近は様々な業種にも携わっています。倒産寸前の企業を幾つか買い取り新たに再興したりと其れはもう一括りでは説明しきれない程の手広さでございまして」
「…」
「お屋敷にいた時から社長は優秀な方だったと噂で訊いていましたが、まさかこれほどまでとは思わずもうただただビックリのひと言です」
「…えーっと…」

先程から私に懇切丁寧に事情を話してくれているこの人は受付嬢の牧山恵美子さん。

元は早乙女家で私の身の回りの支度をしてくれていた人だ。

(薄っすら記憶にはあるのよ…確か私よりも3~4歳年上で綺麗な顔をしているなって感じで覚えていた様な…)

「社長が凛子さまを奥様として迎えた事を知った時は驚きましたが、今では早乙女に勤めていた従業員皆が祝福しています」
「あ…そ、そう…」

(ってまだ正式な奥さんじゃないんだけど…まぁいいか)

彼女曰く、天眞は解雇した屋敷の従業員の何人かを新しく起こしたこの【リンテン】の従業員として雇い直していたとの事。

実際起ち上げた当時の【リンテン】は小さな会社でとあるビルの一室から始まったそうだ。

其れが天眞の手腕であれよあれよという間に大きく成長して行き、会社発足から一年も経たずにこの5階建てのビル丸ごとが本社となり従業員もざっと10倍に増えたとの事だった。

(い、いつの間にそんな事にっ!)

真実を訊かされ驚くしかなかった。

(っていうか天眞、滅茶苦茶デキる社長なんじゃ)

家で見ている天眞とは大違いな顏に驚いてばかりだった。

其れと同時にどうして天眞は会社がこんなに大きくなっている事を私には云ってくれなかったのかが気になった。

「凛子さま、ただ今内線で社長に連絡をお取りしますので少しだけお待ちになって──」
「ちょっと待って!」
「えっ」

カウンター内に置いてある電話の受話器を持ち上げた彼女の手を私は止めた。

「連絡しなくていいわ──私、このまま帰るから」
「え、どうしてですか?折角いらっしゃったのに」
「いいから」
「…凛子、さま」

此処まで来る間に想像していた事に喜んでいた気持ちは小さく萎んでしまっていた。

(小さな会社だって云っていたのに…)

半年前に訊かされた天眞の言葉を嘘だとは思いたくなかった。

実際其の時は小さい会社だったのかも知れないから。

(でも…こんな事になっているだなんて…私、家以外での天眞の事、知らな過ぎだ)

今、目の前で繰り広げられてる現実が中々受け入れ難く、戸惑っている処があった。

(天眞に逢うのは…もう少し心の整理をしてからにしよう)

そう思い、私はこのまま家に帰ろうと思った。

──が

「あら、社長」
「えっ!」

カウンターの中から見て右手にあるエレベーターから天眞が姿を現した。

私は咄嗟にカウンター内に身を隠した。

「凛子さま?!社長ですよ、お逢いに──」
「しーっ、静かにして」

出来る限り小声で私は彼女を制した。

足音がカウンターの方に近づいて来て、やがてよく知った声が聞こえた。

「昼休憩の間出かけて来ます。14時からの会議は予定通り第2会議室で行いますから来訪した関係者は其方に案内してください」
「は、はい、かしこまりました」
「…なんですか、顔が引きつっていますよ」
「えっ、い、いえ…社長が外に出かけられるのが珍しいなと」
「たまには外食もいいでしょう──では頼みました」
「はい、いってらっしゃいませ」

遠ざかる足音を聞いて隠れていた私はホッと息を吐いた。

(……はぁ~気づかれなかった)

「あの…よろしいのですか?凛子さま」
「いいの。其れよりそんなに珍しいの?休憩に外に出るって事が」
「えぇ。社長は一度出社したら退社するまで殆ど社内から出る事がないので…」
「…ふぅん」

其の時ふと思い出した。

(そういえばお昼ご飯は出前取るってメールが)

今彼女が云った殆ど社内から出ないと云っていた言葉と出前メール。

何かが噛み合っていない気がして厭な予感がした。

「あっ、凛子さま」
「今日私が此処に来た事、天眞には内緒にしておいてね!」
「えっ、あ、はい」

私は慌ててカウンター下から這い出て会社から出て行った天眞の後を付ける事にしたのだった。

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