築何年経っているか解らない程に古さを感じる処にいる私は、只今絶賛混乱の渦の中に突っ立っていた。

「おまえが今、何を考えているのかが手に取る様に解る。だけどなこんな平屋のボロ屋だって俺やおふくろにとっては父親が残してくれた唯一の財産なんだ」
「…」
「其れを馬鹿にする事はいくらおまえでも赦さない」
「…」

(これ…天眞、なの?)

家の小ささや古さにも勿論驚いているけれど、其れ以上に驚いているのは目の前にいる天眞、だった。

先刻から口の悪さマックスで私に喋っている男は本当にあの天眞──なのだろうかと眉間に皺を寄せた。

「なんだ、其の顏は」
「…あんた、なんでそんな口が悪いの」
「…」
「私に向かってよくもそんなタメ口全開で気安く喋っているわね!何なのよ一体っ」
「此処は俺の家だ」
「は?」
「俺が家主で、おまえは厄介になっている立場の人間だ」
「や、厄介って…!勝手に連れて来てどの口が云ってるのよ!」
「じゃあ出て行け」
「…は」

冷たい視線と口調に一瞬体に冷たいものが走った。

「此処から出て何処へなりとも行けばいい。自分で部屋を借りて仕事を見つけて、自立して生活するために朝から晩まで汗水垂らして働くといい」
「…」
「其れがおまえに出来るのか?」
「…」
「出来ないんだろう?所詮温室育ちの根っからの我儘お嬢のおまえには」
「…」
「其れともおまえを囲ってくれる男でもいるか?いるなら其処へ行けばいい」
「…」
「まぁ、どうでもいい。ただ此処が厭なら出て行けと云っているだけだ」
「……ひっ」
「なんだ」
「ひぃっく…」
「…」

訳が解らない内に涙が出て来てしゃくり上げだ。

突然屋敷を追い出され、ひとりぼっちになって行く当てもないまま途方に暮れた。

唯一頼りにしていいと思っていた天眞から投げ掛けられた数々の酷い言葉に私の心はポッキリと折れた気がした。

「ひぃ…ひっく…」
「──泣くなんて反則だ」
「ひっ…ひっ、ふぇ……ぐすっ」
「くそっ」
「!」

いきなり天眞が私の肩に手を置き、其のまま敷かれている布団の上に押し倒した。

「よく訊け、凛子」
「!」

(名前、呼び捨てっ?!)

其の驚きも相当なものだったけれど、次に云われた言葉にも相当な衝撃を受けた。

「おまえは此処で暮らすんだ」
「…」
「家の事を少しずつでいいから覚え、そして出来る様になるんだ」
「…」
「此処で少しずつ今までの裕福な生活の癖を直して自立出来る様になるんだ」
「じ、自立…?」
「そうだ。其れまでは俺がおまえを養ってやる」
「…」
「家の事をやれば其の他は自由にしていい──ただし」
「…ただし?」
「…」

少し云うのを躊躇った天眞は、何かを吹っ切る様に数回頭を振って、そして真っ直ぐに私を見て云った。

「此処にいる間は俺のいう事を訊く事が条件だ」
「…」
「勿論──こういう行為を俺が求める時はおまえに拒否権はない」
「! んっ」

いきなり天眞の唇が私のものに重なった。

昼間されたキスの感触が蘇る。

だけど昼間の様に直ぐには離してくれなくて…

「んっ、んっん」
「ん…ん」

執拗に貪られ、そして唇を割られた隙間から舌を捻じ込まれた。

(やっ!ふ、深いっ)

「ん!んっんっ」

体を捩ってかわそうとするけれど、天眞は其れを赦さなかった。

「!」

濃厚なキスの合間に気が付けば私の衣服は乱され、やがて天眞の唇は露わになった私の胸に移動していたのだった。

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