人間の性格って生まれ持った性質が反映される割合はとても少ないと思う。

大体育った環境というものが其の後の性格を大きく形どってしまうと思うのだ。

こればかりは本人のせいじゃない。

そういう風にしてしまった環境が悪いのだと強く思った──







「お願いです!あと、あと十日…せ、せめて一週間待って下さい!」

「…」

初めて見た光景に私はとても衝撃を受けた。

あれは私が小学校に入学した年の誕生日の日だった。

お父様に連れられて誕生日祝いのために食事に出かけようとして玄関を出た時、其の女の人は屋敷の前で土下座していたのだ。

「おい、誰が此処まで入れていいと云った!」
「社長、すみません!ちょっと目を離した隙に入り込んだみたいで…おい!此処はおまえみたいな人間が入っていい処じゃねぇぞ!」
「お願いします、お願いします!どうか…どうか期限を」

女の人はどんなに蹴られても叩かれても頭を上げず、ひたすら何かをお願いしていた。

「お父様、この人、何してるの?」
「おぉ、凛子や。見苦しいものを見せてしまったね。おまえは見なくていいんだよ、さぁ、行こうか」

(あっ)

お父様に手を引かれて車に乗り込もうとした時、ふと目の端に入ったものがあった。

其れは男の子だった。

(あの子)

柱の陰でジッと女の人を泣きそうな顔をして見ている男の子がいたのを見つけた。

幼稚園も小学校も女の子ばかりで、男の子を見た事がなかった私は物珍しく思ってお父様の手を振り解いて其の男の子の処に寄って行った。

「ねぇ!名前、なんていうの?」
「えっ」

間近で見た其の男の子は女の子みたいだった。

パッチリした目元に小さな鼻に形のいい唇。

(お、お人形みたい!)

着ている物は汚くて其処だけ見れば何てことないのに、顔を見ると等身大のお人形みたいだと思った。

「あんた、可愛いわねぇ」
「あ…あの…」
「…」

マジマジと見て、どうしてか急にこの男の子が欲しくて堪らなくなった。

「凛子、そんな小汚い子どもに近寄ってはダメだろう!」
「お父様、凛子、この子が欲しい!」
「は?な、何を」
「欲しい欲しい!今日は凛子の誕生日なんだから何でも買ってくれるって云ったぁー」
「そ、其れは店に売っている物をという意味で、そんな子どもを買うとは」
「…買ってくれないなら凛子、お父様嫌いになる」
「! り、凛子ぉ~」

私はこの歳にしてどうしたら欲しいものが手に入れられるかという事を知っていた。

お父様にこの切り札を出せば買ってもらえないものなど何もないのだと知っていたのだ。

「ねぇ、いいでしょう?お父様」
「……し、仕方が…ない」
「わぁ、ありがとう、お父様!大好き」

「…」


そうして私は男の子の気持ちも何も考えずに、ただ欲しいと思ったから其れを手に入れただけだったのだ──





そんな事があった7歳の誕生日から瞬く間に月日は過ぎ、気が付けば私は成人式を迎えた歳になっていた。


「へ?今、なんて云ったの?」
「ですから、倒産したと云いました」
「倒産って…えぇっと…会社が潰れたって事の、倒産?」
「よくご存じでしたね、其の通りです」
「……」

これから遊びに行こうと支度していた私にそう告げた男は、あの日、私の7歳の誕生日の日に欲しいと強請った可愛い男の子だ。

「この屋敷も借金の抵当に入っていますので、出来るだけ早く立ち退く準備をしてください」
「へ?」
「聞こえませんでしたか?もう凛子さまはこの屋敷に住む事は出来ないと云っているのです」
「…」















(えぇぇぇぇぇぇぇ──!何、其れぇぇぇぇ)



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