【今日は残業~忙しいから仕方がないんだけど…澪の画像見て頑張るよ!】

「…」

携帯に届いた真裕さんからのメールにはぁとため息をつく。

「なんだよ、ため息なんてついて」
「あ、五條さん」

いつもの様にお昼ご飯は社食で摂っていた。

そしていつもの様に私の向かい側の席に着く五條さん。

「知っているか?最近社内で俺とおまえは付き合っているんじゃないかって噂になっている事」
「えっ!な、なんですか其れっ」

いきなり思ってもみなかった言葉を発せられ口に運ぼうと思っていたご飯が箸から零れた。

「こうやって一緒に飯を食う事が多いし、営業にはおまえとふたりでっていうのが多いしな。噂になるのも当然だろう」
「や、嫌だぁ~誤解、解かなくっちゃ!」

私には真裕さんという婚約者がいるのにそんな変な噂を立てられたらたまったものじゃないと思った。

「待て待て、誤解を解く様な真似はよせ。これはおまえにも俺にも都合がいい噂だぜ」
「は?な、何云ってるんですか」
「俺は噂のお蔭でやたら滅多な女に誘われなくなるし、おまえだって鬱陶しい男を寄せたくないだろう?」
「五條さんのメリットは解りますけど、私は…別に寄って来る人なんて」
「いるんだよ、ちょっと前から」
「は?」
「真裕と付き合いだしてからおまえ、妙にいい女になったって男性社員の間ではちょっとした噂になっているんだよ」
「えっ!嘘っ」
「本当。俺、散々聞かれたからな『十倉さんって彼氏いるのかな』とかって」
「…」

そんな事、今までなかったからただただ驚くばかりだった。

「まぁ、確かにな。此処数ヶ月の間でおまえ、其れなりにいい女になったと俺も思うぜ」
「…五條さん」
「恋している女っていうのはこうも変わるんだなと驚いた」
「~~~」

面と向かって五條さんからそう云われて恥ずかしくなった。

仮に私が少しはマシな女になったのだとしたら、其れは全て真裕さんのお蔭なのだ。

彼の存在が私という花を開かせてくれたという事なのだ。

「だから噂は放っておけ。其れともなんだ、俺と嘘でも噂になるのは嫌か?」
「いいえ、そんな事ないですよ、噂、其のままにしておきましょう」
「!」

にっこりと笑顔で五條さんに告げると、何故か五條さんがビックリした様な顔をした。

「? どうかしましたか、五條さん」
「……い、いや、別に…」
「?」

五條さんにしては珍しい上気した顔が少し気になったけれど、其の事は先刻の真裕さんからのメールで直ぐに忘れてしまった。

「そ、そういえばおまえ、ため息ついていたな。どうした」
「あ…えっと、最近真裕さん、仕事が忙しいみたいで…」
「…」
「残業が多くなって夜、逢えない事も多くて…心配なんです」
「ちゃんと医者の指導の下で勤務してるんだろう?心配する事ないんじゃないか」
「でも…」
「もう少し真裕を信じてやれよ」
「え」
「真裕、おまえとの結婚に向けて金貯めているんだよ」
「!」
「これから手術が控えていて、其れなりに出費がかさむだろうし、結婚資金とかそういうの、動ける内は稼ぎたいって気持ちが強いんだよ」
「そんな…私、私だって協力して…ふたりの問題なのに」
「男っていうのは変なプライドがあるんだよ。現に手術費用だって俺が全額払ってやるって云ったのに真裕は頑として首を縦には振らなかった」
「…」
「意外と真裕は頑固なんだ。一度決めた事は決して曲げない。其れが真裕のいい処でもあり悪い処でもある」
「…本当五條さんって…真裕さんの事をよく知っているんですね」
「おまえとはつるんで来た年月が違うから仕方がないだろう。でもこれからはおまえの方が俺なんかよりもうんと俺の知らない真裕を知る事になるんだ」
「そう、かな…」
「そうだよ、ってか既におまえは俺の知らないセックスしている時の真裕を知っている訳だし」
「わっ!わぁぁぁっーな、何云ってるんですかっ」
「静かにしろ、周り、見てんぞ」
「!」

少しはいい感じになった私と五條さんの関係。

しかしそう思えたのはやっぱり勘違いだったのかなと思ってしまう様な会話だった。

だけど不思議と五條さんから真裕さんに関する事で『大丈夫だ』と云われると、そうかもと思えてしまう私だから、其れはちょっと不思議だなと思ったのだった。

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