リリリリリリリリリリリン

「…ん」

其の日、けたたましく鳴る携帯の着信音で目が覚めた。

「誰…」

私は携帯を手に画面を観る。

「…」

しばらく寝ぼけ眼で画面を見つめている間にも着信音が鳴り止む事はなかった。

(何なの、こんな朝早くから)

ため息をひとつついてから渋々通話ボタンを押した。

『遅いぞ!俺からの電話には5秒以内に出ろと云っているだろう』

「…」

(第一声が其れですかっ)

いつもの事でもう慣れたと思っていても、やっぱりそう切り出されるといちいち腹が立つ。

『おい、聞いているのか十倉』

「はい…聞いています」

『だったらちゃんと返事しろ』

「…五條さん、一体何ですか、こんな朝早くから」

『はぁ?早くねぇよ。今何時だと思ってやがる』

「……10時」

『この時間に朝早くという言葉を使うな』

「…」

休日の私にとっては充分朝早い時間だ。

平日の忙しさを休日でリセットしないと次週から頑張ろうとは思えない。

だから私の休日は大量の睡眠時間で過ぎて行く事に決まっているのだ。


『まぁ、いい。おまえ、今すぐ駅前に来い』

「…は?なんですって?」

『いいから来い。今から30分以内に来なかったら──解っているな』

「む、無理ですよ、まだ私布団の中ですよ?!」

『起きて直ぐに走って来れば30分以内だろう』

「何云ってるんですか!お、女には色々支度とかあって──」

『煩い!愚痴っている暇があったらとっとと来い!』

「酷い!五じょ──」

私が反論の言葉を続けようとした瞬間、一方的に電話は切れた。

「な、何よ…いきなり、無茶苦茶じゃない?!」

五條さんの一方的な言葉に憤りを感じながらも、云う通りにしなかった後の事を考えるととても恐ろしくなったので私は慌てて布団から這い出た。


洗顔、歯磨き、着替え、そしていつもよりも手を抜いたメイクを済ませ、鞄を手に慌てて家を出た。


(うわ、あと7分っ)

指定された駅は家から一番近い最寄り駅だけれど、普通に歩くと10分かかる。

(歩いていたら間に合わないよ)

私は走ったり歩いたり、早歩きをしたりと色々速度を変えて駅に向かったのだった。





「──2分46秒遅刻」
「はぁ…はぁ、はぁ…な、何…云って…はぁはぁ…」

改札前で仁王立ちしていた五條さんは私を睨みながらそんな酷い事を云った。

「しかもなんだ、其の服。色気の欠片もねぇな」
「あ、あのですねぇ…起きてから30分で此処に来たんですよ?まずは其処を褒めるべきでしょう!」
「こんな時間まで寝ているおまえが駄目なんだよ。いい歳した女がぐうたらしてんじゃねぇ」
「わ、私がどう休日を過ごそうが五條さんには関係ないでしょう?!」

折角頑張って此処までやって来たというのに、この話の流れはあんまりだと思わず食って掛かる様な云い方になる。

「あぁ、関係ない。だが俺の呼び出しには直ぐに対応しろ」
「!」

急に五條さんの掌が私の髪の毛にかかってビクッとなる。

「寝ぐせを直す時間もなかったのか──本当筋金入りの女子力ゼロ女だな」
「~~~」

私のくせ毛の髪を撫でつける様に優しく触る五條さんの掌を私は払う事が出来なかった。

ぶっきら棒で悪態ばかりつく五條さんだけれど、たまに口調と行動がちぐはぐな時がある。

(この人…多分なんとも思っていない相手でも無意識でこういう事しちゃうんだろうな)

五條さんのこういう何気ない行動も女にモテる要素のひとつになっている様な気がした。

五條さんの事を何も知らない女なら、きっとあっという間に好きになってしまうんだろうなと。


「さ、行くぞ」
「あの、何処に」
「遅刻して来たおまえには教えない」
「はぁ?なんですか、其れ」

髪の毛からパッと掌が放れた瞬間、少しだけ焦燥感が湧いたのは何故だろう。

でもそんな気持ちはまた開始された五條さんの悪態によってなかった事になった。


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