「海斗って今、何やっているの?」

無機質なリビングに通され、途中コンビニに寄って買って来たアルコールやつまみを広げながら私は訊いた。

「…俺は警備会社に勤めている」
「警備会社?って…海斗、警備員なの?」
「まぁ…あながち間違っていないんだけど」
「?」
「凪子は美容師になったんだろう?」
「あ、うん」

少し歯切れの悪い海斗の言葉は気になったけれど、直ぐに話は私の事になって、其れに答える事で海斗の職業の話はあっけなく終わった。


缶ビールを片手に私は長々と康彦との間にあった出来事を海斗に愚痴っていた。

「本当にいきなりだったのぉ…『もう凪子とは付き合えないって』云われて」
「…」
「私はね、もうそろそろ結婚の話が出てもいいんじゃないかなって思っていたの。だって康彦も社会人三年目だったし…私たち、結構上手く行っていると思っていたから」
「…」

同じ様な話を何度してもジッと訊いてくれている海斗をいい事に、私はベラベラと喋り、時々泣き喚いた。

「其れで昨日も───あっ」
「どうした」
「…あぁ…お、思い出したぁ~~」

愚痴が一通り終わった処で繋がる話に私は一瞬戸惑った。

「凪子、どうした」
「…」

洋子さんから告白された事を思い出した。

(そうだ、私…洋子さんとの事…どうしたら)

やや泥酔しかけた頭はほんの少しだけまともになった。

そんな私を見て、海斗はそっと私の隣に寄り添った。

「何かあったのか?」
「…海斗」
「困った事があったなら俺に話せ」
「…」
「俺がおまえの事を守ってやる」
「海斗」

其の言葉を訊いて妙な安心感が私の心に湧いた。

昔から海斗は私の味方だった。

私の事を親身に考えてくれて、適切なアドバイスをくれた。

(海斗…)

今、私の隣にいるのが海斗でよかったと、そんな風に思った。


私は海斗に昨日あった事を全て話した。

勤めている美容院の店長から告白された事。

冗談かと思ったけれどどうやら本気っぽいみたいでこれからどうしたらいいのか──という事を海斗に話した。

すると海斗はみるみる表情を曇らせ、其の顏の眉間には皺が寄った。

「…海斗?」
「おまえは…康彦の次は店長とかって…どんだけ隙がないんだよ」
「は?隙がないって…どういう事」
「…」

何故か海斗は俯き黙ってしまった。

「海斗、ねぇどうしたの?」

私は隣の海斗をユサユサと揺らした。

すると突然、顔を上げた海斗が私の両腕を掴んで其のまま其の場に私を押し倒した。

「!」
「もう…いい加減にしろ!」
「か、海、斗…」
「やっと…やっと康彦と別れたと思ったら、もう次があるとか──おまえはどんだけ俺を付け入らせないんだよ!」
「?!」

ギュッと抑えつけられた両手首が痛んだ。

「凪子、おまえ其の店長と付き合うのか?」
「え」
「丁度いいタイミングでの告白でおまえ、気持ちが揺らいでいるんだろう!」
「な、何を云って…」
「そんな事、赦さねぇぞ!」
「!」

いきなり海斗の唇が私の口を塞いだ。

「んっ!ふぅ…んっ」
「…」

驚いて、海斗の体を押しのけようとしてもビクともしない。

やがて深くなって行った口づけは、私から抵抗する力を奪って行った。

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