十年間好きだった人にフラれました。



「もぅ本っ当信じられませんよぉ~私の青春返せ!って感じですぅ」
「はいはい、そうね」
「15の時からですよ?!高校1年の時から!好きで…大好きで、彼だけ見て来たんですよぉ!」
「そうね~偉いねぇ」
「初めは友だちからって…其れでもいいと思って…だけど高校卒業の頃になってやっと…やっと私を彼女にしてくれて…だから私の初めてだって捧げたのにぃ~」
「そりゃ好きな男に求められれば女はヤッちゃうわよねぇ」
「…進路…別々だったけど…時間を見ては逢って、彼氏彼女らしい事していたのに…其れなのに…」
「二股掛けられていた挙句、片方の女がデキちゃった、とはね」
「~~ぜ、全然…気が付かなかったんですよぉー!まさか、まさか…っうぅ~」
「所詮男っていうのはそういう生き物なのよ。常に複数の女を渡り歩く本能を持った下衆なのよ」
「…でも…彼だけは違うって思ってて…」
「恋は盲目ね、馬鹿な女の典型例よ」
「うぅ…洋子さん~~其れ慰めてもらっていない~」
「だって本当に呆れているんだからね」
「!」

営業終了後のお店の休憩室で、失恋して自棄酒を渇喰らって管を巻いている私の顎を、洋子さんはクイッと持ち上げた。

「凪子、あんたを本当に幸せに出来るのはわたしだけだって解らないの?」
「…よ、洋子…さん?」
「ずっとあんたの事を可愛がって来たわたしの気持ち、どうして解らないのよ」
「…冗談…ですよね?」
「冗談じゃないってーの」
「!」

間近に迫った洋子さんの顔で、私は一気に酔いが冷めた。


私は澤部 凪子(サワベ ナギコ)25歳。

美容学校を卒業してからずっと働いている美容院の店長である天石 洋子(アマイシ ヨウコ)さんにはずっと可愛がってもらっていると感じていた。

だけど、其の特別可愛がってもらっていた理由──というのがまさか…

(まさか!)

「凪子、いい加減わたしのものになりなさい」
「じょ、冗談…ですよね、だ、だって洋子さん女で…私も女で…」
「だから何」
「だから何って…あの、女同士っていうのは──」
「同性恋愛しちゃダメって誰が決めてるの?」
「そ、そそそ、其れは~~」

何故かグイグイと私に迫って来ている洋子さん。

初めは私をからかっているのだと思っていたけれど、洋子さんの其の表情はとても真剣なもので──

「凪子、わたしは男以上の幸せと快楽をあんたに与えてあげられるわよ」
「! やっ」

洋子さんの綺麗な顔が私の目の前に来た瞬間、私は火事場の馬鹿力よろしく思いっきり洋子さんの体を跳ね除け「失礼します!」と捨て台詞を吐きながらお店を飛び出したのだった。


まさか…


まさか洋子さんが…


(私をそういう対象として見ていただなんて!)

失恋したショックなんてあっという間に吹き飛んでしまい、夜の街中を全力疾走しながら私はこれからどうしたらいいのだろうと頭を悩ませたのだった。

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