昔から本を読むのが好きだった。

だって本を読めば現実世界では味わえない出来事を想像という形で疑似体験出来るのだから。

あたかも体験したかの様な気持ちになれるのは、私にとっては最高の脳内娯楽だった。




「北森さんっていつも図書室にいるよね」
「え」

中学3年生の時、そうやって声を掛けて来た人がいた。

寒い時期の放課後、図書室に人はまばらで読書に集中するにはもってこいの環境だったけれど、其の人物によって静かな環境は一転した。

「あ、ごめんね。読書の邪魔、しちゃった?」
「そ、そんな事…ないけど」

私に声を掛けてくれたのは隣のクラスの間宮 紘(マミヤ ヒロ)だった。

頭が良くて優しくて面倒見がよくて頼りがいのある、女子の間では密かに人気の高かった男子のひとりだ。

同じ図書委員というだけの顔見知りだったけれど、あまり喋った事はなかった。

(私とはいる世界が違う人)

私も他の女子同様、間宮くんに対して淡い憧れみたいな気持ちを抱いていたけれど、私なんか──という気持ちがあって端っから其の気持ちには蓋をしていた。

「今は何を読んでいるの?」
「あ…海外の文芸作品なんだけど」
「えっ、原文で読んでいるの?」
「ま、まさか!読める訳ないよ」
「あぁ、日本語訳かぁ~びっくりした」
「…」

どうしていきなり間宮くんが私なんかに声を掛けて来たのか解らなかった。

私は本を読む事しか出来ない無能な女子で、大して可愛くもないし愛想も良くない。

当然男子とは用件以外の会話をした事がなかった。

つまり私、北森 愛恵(キタモリ マナエ)は性格も見た目も地味だという事だ。

(そんな私に何で)

私の戸惑う気持ちを余所に、間宮くんは静々と私に喋りかけていた。

「俺、いつも本を読んでいる北森さんを見ていたよ」
「えっ」
「最初は何をそんなに夢中になって読んでいるんだろうと思って本のタイトルとか気になっていたんだけど、段々本を読んで色んな表情をしている北森さん自身を気にしている事に気が付いて」
「…」
「好き…に、なっていた」
「?!」




何?!


(いきなり何なの、これはぁぁぁ──?!!)


「な…何、を」
「何をって、告白しているんだけど、俺」
「!!」

まさか


まさか


(まさか間宮くんが…わ、私を──?!)


突然の告白は私にとても大きな衝撃をもたらしたけれど、間宮くんの次の言葉を訊いて其れ以上の衝撃を受けた。

「俺、冬休み前に転校する事になったんだ。だから…今、告白出来てよかった」


00a30
◆ランキングサイトに参加しています。
1ポチ頂けると執筆の励みになります。

恋愛ランキング
にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村