15歳の私たちはお互いがこういう処に初めて入ったために少し勝手が解らなかった。

中に入るまではもの凄く悪い事をしているんじゃないかという罪悪感が強かったけれど、其処は思いのほか普通のホテルみたいだったから選んだ部屋に入る頃にはカラオケルームに入るぐらいの気易い気持ちになっていた。


「ふ、普通の部屋、だね」
「…う、うん」

大きなベッドの端にふたりして座って話す事といったらとても他愛のない事ばかりで、本来の目的の行為には中々移行しなかった。

(時間…3時間って決まっているんだよね)

休憩3時間という設定は長いんだか短いんだかよく解らなかった私は少しだけドキドキしていた。

『これで…終わりにしたくない』

そう云った間宮くんの気持ちは私の気持ちと同じで、其の気持ちを抱(イダ)いたまま間宮くんに手を引かれて連れてこられたのがこのラブホテルだった。

朝、遊園地へ行く電車の中で目に入っていた数々のホテルの看板の風景。

其れを間宮くんは覚えていて、遊園地と家の間にある駅で一旦降りた私たちだった。

勿論此処で何をするのかは解っている。

そういう行為をするには私たちは早過ぎるという事も充分解っている。

──だけど

「…俺、多分アメリカに行ったら北森さんの事を忘れると思う」
「!」

急にそんな言葉が耳に届いて私は驚いた。

「今は北森さんの事が好きだけど、でも日本とアメリカで離れ離れになって今度いつ逢えるか解らない状況で俺は…北森さんを好きでい続ける自信が……ない」
「…」
「新しい環境に馴染めば其処で出逢った人に恋する事があるかも知れない」
「…」
「でも其れは北森さんも同じかも知れないよね」
「…」
「だから俺は北森さんの事を好きだけど彼女になってとは云えない」
「…」
「多分こういう時は『ずっと好きでいるよ、忘れない』とか云った方がいいんだろうけど…俺は確信の持てない無責任な言葉を北森さんに残したくないんだ」
「…」
「だから俺の事を待っていてとも、ずっと好きでいてとも…何も云えないんだ」
「…」

間宮くんの其の言葉に何故か私は本当の意味での誠実さを感じた。

其れは一見矛盾しているかの様な言葉だったけれど、私にとっては間宮くんの私に対する気持ちが真剣なんだという事が解って何故か嬉しささえ感じてしまっていた。

「ただ今、本当に俺は北森さんの事が好きで好きで…この気持ちを心と体と記憶に刻み込みたいって思うんだ」
「…間宮、くん」
「其れって…ズルい、かな」
「…ううん、ズルくない」
「…」
「私も間宮くんの事が好きで…今、凄く好きで…其の好きだっていう気持ちを間宮くんが云う様に心と体と記憶に刻み込みたいって思うよ」
「…一緒だね」
「ただ私の場合は…そんなに簡単に忘れられないと思う」
「え」
「間宮くんとの事、私はそんなに簡単に忘れられないよ」
「…北森さん」
「だから…私が間宮くんの事を好きな気持ちが消えてなくなってしまうまでは間宮くんの事を好きでいても…いい?」
「其れは…」
「ただ好きなだけ。間宮くんには何も求めないから」
「…」
「…ダメ?」
「愛恵」
「!」

いきなり名前で呼ばれ、其のままベッドに押し倒された。

「ま、間み…」
「好きだ、好きだよ、愛恵!」
「んっ」

私の唇はぎこちない間宮くんからのキスで塞がれた。

私にとっては初めての…

初めて好きになった人とのファーストキスで…


そして───


好きな人に処女を捧げられた事は私にとって幸せな記憶として心と体と記憶に残ったのだった。

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