「ん?何これ」
「…え」

疲れ切った体を少し起こして見ると、衛藤さんが机に積まれていた数冊の本を手にパラパラと見ていた。

「これって」
「官能小説。今度の仕事で知識が必要だから読んでいるの」
「へぇ、官能小説を扱う仕事、ねぇ」

そう云いながら衛藤さんは私が横になっているベッドに腰を下ろして本を読み始めた。

「衛藤さんもそういうの読んだりする?」
「しない。興味ないな」
「だよねぇ、文章で感じるより実際に体で感じた方がずっと気持ちいいもんね」
「其れは人によりけりだと思うけど…へぇ、結構凄いね、表現が」
「誇張されているだけで余計に萎えない?」
「そんな事ないけど」
「…」

一度ヌいて鎮まっていた衛藤さんのモノが大きくなっているのが目に入った。

「まさか文章読んで其の気になるの?」
「なるみたいだね、この作家、凄いね…擬音の使い方が面白い程に艶めかしい」
「男と女の感性って違うのね。私は嫌い。其の人の表現って女を見下しているみたいで辟易するわ」
「ふっ、そう思えるって事はこの文章で其処まで想像出来るって事だろう?上手いよ、文章表現」
「…」

衛藤さんはパタンと本を閉じて、またベッドの中に入って来た。

「ねぇ、もう一回していい?」
「もうすっかり其の気じゃない」
「悔しい事に本に触発された。生身の女の肉を味わいたいな」
「凄い云い方ね──あっ」

衛藤さんはすばやくゴムを着け、あっという間に私の中に挿入って来た。

「あっ、あぁぁっ」
「んっ、なんだ…君も濡れているじゃないか」
「…はぁ…あ、あなたの…モノに触発、されたのよ…」
「そうか」
「あっ!あぁぁんっ」

いきなり激しい律動が開始され、グチュグチュと水音が響いた。

「凄いな…先刻よりもずっと溢れている」
「はぁん…あっあっ…あなたも…は、激しい…わよ」
「ふっ…凄いな、官能小説──んっ」
「あぁぁぁ、あん、あんあん」

衛藤さんの激しい腰遣いに合わせて私の腰も動いていた。

一度絶頂を迎えていた私の中は既にヒクついていて、弱い収縮を始めていた。

「イキそうだ、愛恵…」
「ん、イク…イク、わぁ…あっ…あぁぁっ」

肌と肌がパンパンと当たる音の感覚が短くなった其の時、衛藤さんは腰の動きを止めた。

「はぁ…はぁはぁはぁ…」
「…んっ…んん…」

ドクドクと脈打つモノの存在を静かに感じる。

(官能小説って…こういう効果があるって事なのかな)

私はぼんやりとそんな事を考えていた。




初めて読んだ官能小説という分野の本。

書く人によってさほど明確な違いはない。

結局はヤるまでのプロセスを少し前後に配置して、あとはひたすら卑猥な行為の表現をしているだけだ。

ただ中には上手い──という作家も何人かいて、今私が気にかけている作家も其のうちのひとりだった。

(この人…衛藤さんがやたらと褒めていたなぁ)

私は本を手にパラパラとページをめくっていた。

【八尋 真己】

(やひろまみ…か)

巻末にある作家の顔写真を見ると、サングラスを掛けていて顔自体は解らないけれど、形のいい唇には流行りの色のルージュが引かれていて、綺麗な長いストレートヘアーが印象的な細身の女性だった。

(女なのに男の心理に詳しくて、だけど女の心理も決して下手って訳じゃないのよね)

解り過ぎるから其の情景を想像すると怒れたり呆れたり辟易したりする。

そういった意味ではやっぱり衛藤さんのいう様にこの人は上手い、という事なのだろうと思った。

「…」

何故か私は彼女の事が気になって仕方がなくなっていたのだった。

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