「知ってるか、静流。義理でも父親とは結婚出来ないんだぞ」
「…」
「戸籍上三親等以内の婚姻は法律で──」
「煩い。知っているわよ、そんな事」
「…あっそ」

昼休み──

高校に入ってから知り合った相模 正親(サガミ マサチカ)と生徒会室の一角で昼食を取っていた。

この正親は高校に入学した其の日に私に告白をして来た3年生だった。

しかも生徒会長という肩書を持った人物。

入学式が終わった後、いきなり放送で生徒会室に呼び出されて『一目惚れした、付き合ってくれ』と云われたのだ。

私は其の唐突な正親の告白に驚いたけれど、あまりにも正親が強引かつ真剣な様子だったので其れなりの誠意を持って返事をした。

『私は義理の父の事が好きなのであなたとは付き合えません』

と。

しかし其の断り方が何故か正親の心証に響いたようで、断られたというのにより一層力強く『益々気に入った!』と云われ、以来鬱陶しいくらいに付きまとわれる様になった──という現状だ。

最初は正親の場所を弁えない接触が堪らなく厭だった私だけれど…

(でも本当の処は助かっているかも)

高校入学から三ヶ月ほど経ったけれど、未だに気心の知れた友だちというのがひとりも出来ていない私にとってはこの正親といる時だけが唯一学校内で本当の自分を曝け出す事の出来る時間だった。

【UTSUNOMIYA】のイメージを損なわない様に常に品行方正で、誰に対しても平等に万遍なく卒なく行動する事は私にはかなりの苦行だった。

本当の私を知っても変わらず接してくれる正親の存在はありがたいものなのかも知れなかった。

「なぁ、静流。今日放課後デートしない?珍しく生徒会活動がなくてさぁ」
「しない」
「えぇーなんだよぉー折角俺が誘っているのにー」
「関係ないよ、そんなの。兎に角今日はダメ。送迎の運転手が兵馬さんだもん」
「──兵馬って…親父さんの弟っていう?」
「そう、叔父さん」
「…ふぅん」

鬱積して行く想いを小出しに正親に話す事があったから、正親は私の環境下の人間関係を何となく把握しているようだった。

だからといって他の人に面白可笑しく吹聴する男じゃないから安心している、というのがあって私は何となく時間があれば正親と過ごしていたのだった。

(だからといって付き合うとかはありえないけれど)

其処だけは何があっても間違えない私だった。



授業が終わり、約束の時間通り私は校門を出て送迎の車を見つけた。

「お待たせ」

助手席のドアを開けて車内に乗り込んだ私を兵馬さんはいつもの笑顔で「お疲れさん」と声を掛けた。

緩やかに走り出した車内にはカーラジオから小さくクラシックが流れていた。

「なぁ、静流」
「何?」
「これからどうする?」
「どうするって?」
「俺、もう直帰していいんだよ」
「…」

なんとなく兵馬さんの云いたい事が解って私は少しだけ考えた。

そして

「…また、何か見せてくれるの?」
「──まぁな」

いつも通りの云い方。

私は少しだけ考えるフリをして答える。

「じゃあ、ちょっとだけ寄り道してってもいいよ」
「本当か?──よし!」

そう云った途端、車はグンッとスピードを上げた。

「ちょ!兵馬さん、安全運転!!」
「あはははっ、了解了解~」
「…」

本当25にもなって子どもっぽいんだから──と心の中で思った私だった。


1sil
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